首藤剛志のふらふらファイル箱

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「COSMOS ピンクショック」二部……その3

   「COSMOS ピンクショック」2  その3
                 首藤剛志

○ピンクショック コックピット
ミッチ「近道?宇宙への聖域への?…うん、わたし、ヒロちゃんに早く会いたい。行っちゃう。」
コンピューター「待って下さい。わたし未知のもの、インプットされていない。だから答えます。この道は危険!今まで通り、まっすぐ行った方がいい…」
ミッチ「でも、今まで通り行ったら、何年かかるって思う…」
コンピューター「それも分からない。」
ミッチ「わたし17歳、もうすぐオバン、ヒロちゃんに何もあげられなくなっちゃう。」
コンピューター「せいては事をし損じる。人生、苦もありゃ楽もある…若いうちの苦労は、お金を払ってでもしろ…」
ミッチ「わたし、楽するんじゃないわ。急いでいるだけ…赤ずきんちゃんじゃないもん。道草食うわけじゃないわ。近道するんだもん。悪いことじゃないと思う。狼だってきっと出てはこないわ。」
コンピューター「やれやれ!言い出したら止まらない。」
ミッチ「そう、わたしは止まらない。ミッチ行きます。」
   と、ヴィジョンに、団長が写る。
団長「待ってぇな。ファンの気持ちも聞いてえな。うちら、あんはんに、危険な目は、もう会わせとうない。」
   ミッチ涙ぐむ。
ミッチ「みんな…みんな、ありがと…でもね、わたし行く!そう決めたの…けど、お願い、私の真似はしないで、だってこれわたしが考えて、わたしが決めたの…わたしはわたしの為…誰の為でもない。だから、絶対、わたしの為に危険な事しないで…」
団長「ミッチ」
   船団からミッチコールが沸き上がる。
ミッチ「もう一度、ありがとう。さようなら。わたし、きっとヒロちゃんに会います!ピンクショック、GO!」
   ピンクショック信号を突き破って、ブラックホールへ向かっていく。
団長「(涙ぐみ)わたしの真似はしないで…。よう言うた。これぞアイドルの心得や。」
   と、その横をギャッピー艦が素っ飛んで行く。
団長「あんさん、抜け駆けですか…。」
ギャッピー「諸君らにはかかわりのない事…私は、失ったものを見つけにここへ来た。私は私の為にここへ来た。私にとって、あの娘の愛を見届ける事、見守ること、それが、私の人生の中の愛の不毛への反証!私は、あの娘の愛を見守るのではない。内なる私の愛の存在を見つけ出したいのだ。」
団長「難しいこと、言わんでも分かりまっせ。わしかて、210年、タイガースを愛しとったのは、タイガースにわてを見たからや。頑張っても、頑張っても、頑張っても、どっか抜けてて、勝てへん。タイガースはわいや!いつか勝つ日ィ夢見て!これは、タイガースが、ただ好きなんやおまへん。わいがタイガースの真似した訳やおまへん。タイガースを見つめること、それは、わてを見つめる事なんや!わても行きまっせ!」
   団長の旗艦、ギャッピーに続く。
副団長「団長、勝手なこと抜かしくさって。わいは、ただ、、ミッチーが好きなだけや
…女房子供も貯金もあらへんしな…後にも何にもあらへん。いてこましたれ。」
   副団長機 続く。
   暴走族ロケットの男-。
男 暴走族「中年の思い込みは危険だぜィ…だが、俺たちに昨日はないが、明日はある。」
女 暴走族「あたい達の明日は、あたい達がつかむ!」
   暴走ロケット群、突っ込んでいく。
   観光ロケットの席で
老婆「若いっていいですねぇ…」
老人「帰らざる日々じゃ…」
老婆「そうですか?」
老人「あん?」
老婆「思い出しませんか。あなたが、結婚式場から、わたしを奪い去ってくれた日のこと!」

○イメージシーン
   教会のガラス窓をどんどんと、老人が叩いている。
   老人、絶叫する。
老人「婆さ~ん!」
   バスガイドがつぶやく。
バスガイド「私、いつも、人に景色を見せるだけ…説明するだけ…なにひとつ、自分でやった事なかった…もしも、あの向こうに何かあるなら…」
   バスガイド、立ち上がる。
バスガイド「わたし 行きたい。予定なんてどうでもいい。パックツアーは、もう沢山。みんな、いってもいいかな!?」
   観光客 叫ぶ。
観光客「よろしいんじゃないですかぁ!!」
   観光ロケットの船長がつぶやく。
船長「乗ったぜ!客の命を気にするのは、もう沢山!俺の命は、俺のもんだ!」
   観光ロケット、突っ込んで行く。


○宇宙
   飛んで行くお尋ね者会社のロケット
○同 コックピット
ジェーン「あきれた…」
ラン「どうする、あたいら」
ジェーン「後にゃ、あたいらの会社がある。けど借金もある。」
ラン「前にゃ、あの娘に対する意地もある。」
ジェーン「星雲一、ツオーイ女は、あたい達だよ。」
ラン「この星雲にゃ、もう、ろくなゴキブリはいない。あたい達がやっつけたんだ。」
ジェーン「本当、とっくに、この星雲にお楽しみは終わっていたのかもね。」
ラン「お楽しみは?」
ジェーン「これからさ!」
   ブーン! ロケットは素っ飛んで行く。

○星雲連合会議
A「行きましたか?」
D「行きました」
B「道案内にだまされて?」
D「道路表示は間違えやすい」
議長「世は全て事もなし、これにて一件落着」
   出席者達、グビビと笑う。

○ピンクショックは、ブラックホールへ突っ込んでいく。
   もみくちゃにされる。
   続いて突っ込む、ギャッピー機、団長機、その他!
ミッチ「わたし、止まらない!」
ギャッピー「止まらぬ!」
団長他「止まってたまるか!」

○船団はもみくちゃにされながら、ブラックホールの中を飛んで行く。
   船団の横をジェーン達のロケットが駆け抜ける。
二人の声「イヤッホー!」
団長「な、なんや。あれは!」
副団長「うちらと違う小型スピード機や!とても追いつけへん」
ギャッピー「そればかりではない。」
団長・副団長「あん?」
ギャッピー「ここは、時空のゆがみの中だ。我々、一人一人がどこに連れていかれるかも分からぬ…ミッチ!再び会えんことを…今は神に祈るのみ…」

ブラックホールの中、それぞれの機体がもみくちゃになりながら、消えていく。
                                  つづく