首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「愛は死ぬ」

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 これは、映画ではなく単行本である。
 電子書籍週間ランキングというのがあって、ここのところ、上位に必ず入っている本に「AV女優」という本がある。
 僕も、十年ぐらい前に単行本で読んだ憶えのあるアダルトビデオの女優達のインタビュー集である。
 興味本位でなく、アダルト女優達の生活と意見を、真面目に聞きだしているインタビュー集だが、その本を書いた永沢光雄氏が、昨年、四十代後半でガンで亡くなった。
 ガン発病後に書いた短編集「愛は死ぬ」……リトルモア刊を読んだが、かなり、身につまされる本だった。
 氏は、小学生の頃から物書きになりたかったが、数本の小説と、インタビュー集と日記を残しただけで亡くなった。
 アルコール依存で、朝から晩までアルコール漬け……咽のガンで手術し、声を失った後も飲み続けていた。
 アルコールに依存していたからこそ、真面目な姿勢で「AV女優」のインタビュー集が書けたという意見もある。
 アルコール依存症者の平均寿命は51~52才と言われているから、平均寿命か来る前に亡くなった事になる。
 年中酔っていながら、誰からも親しまれていた人らしい。
 そんな人だから、いざインタビューされるとなると身構えがちなAV女優も、正直な心境を話せたのかもしれない。
 書けない書けないともがきながら、酒を飲み続ける永沢氏の心情が、「愛は死ぬ」には、割とあっさりと書かれている。
 彼の心境は、僕にも分かる気がする。
 氏の奥さんも、生活の負担などがかなりかかっていただろうに、淡々とアルコール依存者の妻を演じていたようだ。
 いささか怠惰ではあるが、アルコールにまみれて亡くなった永沢氏の人生は、それなりに、幸せだったのではないかと思える本である。
 なお「AV女優」……文藝春秋……と言う本は、読んで損した気にはならないインタビュー集である。
 男性よりも、むしろ女性に読んでもらって意見を聞きたい本だが、妻は見向きもせずに小田原から引っ越しする時には「図書館に寄贈する訳にも行かない」と言うことで、結局、古本屋に他の駄本と一緒に売ってしまった。
 本屋では、買いにくい題名だから、電子書籍で売れているのかもしれない……とも思う。