首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

映画「太陽」

先日の「夕凪の街 桜の国」については、表現に気を付けたましたが、寄せていただいたコメントへの返答も、気を使いとても疲れました。
で、またまた、感想の難しい映画をDVDで見てしまいました。
感想など書かずにスルーしてしまえばいいのですが、単に映画として見た場合、かなり出来がいいと思うので……それに、上映館も少なかったと聞いたので、見ておいていい映画という意味で、紹介します。
 ロシア映画です。「エルミタージュ幻想」という、とても僕の好きな映画を作った監督の作品で、いつか見たいと思っていたのですが、東京でも上映館が確か1館しかなく、見る機会を逸してしまった映画です。
 ある国で神と呼ばれていた方が、敗戦によって、自分は人間であると宣言するまでを描いた映画なのですが、いうまでもなくその国は日本です。
 もともと、ロシア映画は、僕の肌に合わなかったのですが、この映画を見て、ロシア映画……旧ソ連映画という言い方も実はとても変なのですが……も自由になったんだなあと、感慨しきりです。
 僕は昭和に生まれながら、この映画の主人公についてほとんど知らないのですが、この映画がフィクションであるぐらいは分かります。だからといって、この映画を政治的、宗教的(この映画の場合、神道になるのかなあ……)思想的な立場から、とやかく言える資格は僕にはありません。
 ロシアの映画作家が描いた日本人とアメリカ人が出てくるわけですから、首をひねるような所もいくつかあります。 とくに、チャップリンに似ているなどと言いながら、ぱしゃぱしゃ写真を撮るシーンなど、いくらなんでもこんなにアメリカ人は図々しいかね? と疑問を感じざるを得ませんが、ロシア人の見たアメリカ人だから、しょうがないのかなと、思いもします。
 この映画になにか日本に対するメッセージがあるとしても、「あ、そう」と、聞き流すしかありまん。
 なにしろ、この主人公の存在については、僕自身が、昔「天皇機関説」というのがあったということを知っている程度の無知さ加減ですから、何にも言えないんです。
 この映画監督の映像表現力は、とても、しっかりしていますから、その制作姿勢から察するに、僕の知る以上に、当時のこの国を出来る限り調べたに違いありません。
 でも、やはり、外国人の見た日本人だから、妙なんです。
 しかし、日本の歴史をちょっとかじると、中世から現代まで、いつもはほったらかしにしているように見えて、何事かあると、すぐ、文字どおり錦の御旗として出てくる存在でもあるわけで、やっぱり、無関心でいるわけにもいかず、かなり、僕個人としてはこの映画を見て困ってしまいます。
 王様の経験のない国、アメリカも、戦争には勝ったものの日本という国のこの存在には困ったろうなあ……と、思います。
 いささか、主人公に扮するイッセー尾形さんの形態模写がオーバースイングな気もしますが、映画としては一級品の出来だと思います。単なる映画芸術品として見る事が許されるならですが……さすが、映画の基礎とも言えるモンタージュ理論のエーゼンシュタインが出てきた国の監督作品らしさがあります。
 日本という国が、とても不思議な国だということを自覚する意味でも、見る価値のある映画だと思います。
 ともかく日本では、作れっこない映画です。
 この監督、ヒットラーレーニンが主役の映画も作ったらしいのですが、特にレーニンを主人公にした
映画は見てみたいです。
 この監督は、自分の国のあの人物をどう描いたのでしょうか?
 もっとも、ロシアとソ連は違う国だと言われたり、俺は、国なんか関係ない、一人の映画芸術家なんだ……と言われたら、返す言葉はありません。