首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

[謹賀新年、のだめはだめじゃなかった。

あけましておめでたいんだかなんだか不安なトラ年です。
なにせ、野球のタイガースフアンなんで、元気な巨人を見ていると心配で心配で……でも、僕の身体だけはなんとか元気です。
去年最後の映画は中学生の娘とデイト(^_^;)で見た「のだめカンタービレ」。去年最後の大バカ映画(いい意味で)でした。
じいさんの僕とわざわざ「のだめ」を見る娘の狙いは一足遅れのクリスマスプレゼントなのは見え見えで、おじさんとしては恥ずかしかったのですが、意外に客席は老若男女入り混じっていました。クラシックの力なんでしょうかね?
基本的にテレビドラマ人気にあやかった映画は嫌いです。マンガやアニメの実写もすきじゃありません。
しかし、この映画、アニメの「ヤマト」で沈没した日本映画を浮かび上がらせてくれる力を最後の最後で見せてくれてほっとしました。
テレビドラマを見ていない人には分かりにくいかもしれない「のだめ」と千秋の関係と、なぜヨーロッパにいるのかを、ろくに説明せずに分からせる強引で説得力があるんだかないんだかわからない、上野樹里さんと玉木宏くんの見せる序盤の凸凹怪演……あれよあれよで、「のだめ」のおバカな世界に引き込みます。どうでもいいんです。ストーリーは……クラシックの実力はあるけれど変な女の子と男の子がいて恋愛混じりのギャグ展開……そして、テーマは「音楽の力」……もともと少女マンガですから、その世界観に客を引き込めば勝ちです。その点、この映画、キャスティングがおバカなんだか真面目なんだか分からないほど色々なキャラクターの大混乱で成功していると思います。
特に驚いたのは、この映画のスタッフのクラシックへの真面目なこだわりです。
名前や作曲家は忘れたが僕らの耳になじみがあるクラシックのオンパレード……(丁寧な解説もしてくれます)
音楽教養おバカ映画でもあるわけです。
特に最初に演奏される「ボレロ」はすごい。僕は、「銀河英雄伝説」というアニメで戦闘シーンに「ボレロ」をフルに流した前科があるので、「ボレロ」には、ちょっとだけうるさいのです。「のだめ」の「ボレロ」はびっくりしました。文字通り「ボロボロボレロ」なのですが、これだけ下手に聞こえて、それでもかろうじて「ボレロ」として聞かせるには、下手な演奏者たちでは無理です。下手な演奏は、うまい演奏者が演奏するから下手に聞こえるのです。ここだけでもこの映画を見る価値がある。更に「のだめ」の弾く「きらきら星」どこかぶっとんだ「超絶?トルコ行進曲」これは稽古をしている時からすごい。もちろん、演奏は吹き替えでしょうが、そうとうすごいピアニストが演奏していると思います。天才ピアニストといわれる(僕はひとりよがりだと思いますが)グレン・グールドもどきのはちゃめちゃぶりといったら、ほめすぎでしょうか。娘に「家に帰ったら参考にグールドを聞けと言ったら、グールドのほうがめちゃめちゃだった」と言っていましたが……(笑)
で、まあ、「のだめ」の妄想変態CGはともかく、現実部分のCGアニメは(変態カレーなど)はやりすぎだとも思いますが、更に実写変態人、竹中直人さんのベートーベン風というより弁当弁風名指揮者様が登場すると、それも気にならなくなります。
考えてみれば、映画のワイドスクリーンはオーケストラを描くのに適し、ピアノの鍵盤、グランドピアノの長さを描くのにも適しています。
音の面でもテレビより音響効果のよい映画館に向いています。
まあ、偉そうなことを言わせていただければ、ドルビーデジタルの音は、いかにもアメリカンで派手すぎてクラシックの繊細さに欠けますが、それを言うのは贅沢でしょう。
そんな贅沢を言いたくなるほど、この映画のスタッフは、クラシックにこだわっています。
それが、おバカなのか真面目なのかわけのわからん「のだめカンタービレ」世界を作るのに成功していると思います。
そして、終盤、チャイコで千秋の指揮に感動していた「のだめ」が、千秋のバッハを聞いて、次第に表情が変わっていくあたり……つまり、千秋が恋人としてではなく、追いつき越えなけれればならないライバルに変貌していくのを感じる……このあたりの上野樹里の複雑な表情は彼女が上手いのか、それとも天性の才能なのか……レンタルビデオ屋で、上野樹里の出ている映画のDVDを片っ端から借りてみました。
映画界は、この人を「のだめ」に味をしめてコメディ女優に終わらせないでほしいと思います。
で、これは前編であります。
 後編では。どんなクラシックがでてくるのでしょう。
 テレビドラマから続けると、有名どころは出尽くしている気もします。
 ラプソディインブルーまで出しちゃいましたから……
 しかし、大物が残っている。
 このストーリーがハッピーエンドならクライマックスにぴったりのピアノとオーケストラの協演ラフマニノフのピアノ協奏曲があります。
 しかし、それじゃあ、あまりにベタすぎる気もしますしねえ……
 僕なら。耳が聞こえづらくなっている弁当弁竹中直人作曲(編曲?)ベートーベンピアノ協奏曲「月光」……そんな曲ありません……つまり、ベートーベンのピアノ曲「月光」をオーケストラとの協奏曲にするんです……そして、
「のだめ」と「千秋」の才能の開花であるピアノ協奏曲を聞き「これが聞きたかった」と竹中ベートーベン、涙まじりにうなずく。
もっとも、そんな曲を作曲(編曲)し、演奏しようとするおバカな挑戦をする人は現実にはいないでしょうけれどね。
 つまり、僕はこの映画にもアニメにも原作漫画にも関係ないけれど、そんなラストシーンを想像したくなるほど、この映画を楽しめたということです。クラシックに興味のある方もない方も、「のだめ」のおバカギャグが嫌いな方も、音響効果のいい劇場でどうぞ。
 そして、残るおバカ映画のひとつ「2012」も劇場向きです。
 年賀状である方が、この映画の監督の作品、ビジュアルはいいが、ストーリーがねえ……と書いていました。
 一般的にも、同意見が多いようです。
 でも僕は、そのおバカなストーリーがすごく面白かったのです。
 それについては次回にでも……
 では。