首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

変な小田原

小田原に行ってきた。
 小田原の文学散歩に、お付き合いさせていただいたのだが、色々歩き回り、いささか疲れた。
 その時の事は、別の機会にお話しする事にして、小田原駅について気がついた事……ここ数年、小田原駅はモダンで便利に生まれ変わり、新幹線は止まる。小田急線はある。大雄山線もある。その景観はガラス張り、何となくSF的で、小田原城と奇妙なバランスを見せている。
 しかし、今日、気がついたのだが、駅の入り口に、小振りな二宮金次郎の像が立っている。
 薪を背にしょいこんで、本を読んでいるおなじみの銅像だ。
 二宮尊徳は、この土地の出身の人だから、それはおかしくない。
 それどころか、勤勉のシンボルのような人だから、どこの公園や駅前や学校にあってもおかしくない。
 しかし、そのそばに、なんと、小便小僧の像も立っているのだ。
 小便小僧は、ヨーロッパの国(たしかオランダ)の国民的英雄少年だ。
 どこの公園や駅前にあってもおかしくない。
 しかし、小便小僧と、二宮金次郎が、並ぶように同じ場所にいるのは、どうか?
 しかも、小便小僧が放出する小水は、二宮金次郎の方向である。
 誰が、この配置を考えたのだろう。
 小田原は、変なミスマッチのある街である。
 一度、訪れてみて損はない。
 だが、若い男女が待ち合わせするのに、小便小僧と二宮金次郎のどちらを選ぶのだろう。
 写真に撮ろうとしたが、小便小僧にピントを合わせると、二宮金次郎がぼけて、二宮金次郎にピントを合わせると小便小僧がぼけてしまう。
 微妙な位置関係で、二つの像は立っているから、写真を撮るのはあきらめた。
 小田原の街は、山もある。海もある。川もある。空気もいい。何でもそろっている。
 市街地に、映画館はないが、映画祭はやっている。
 二宮金次郎と小便小僧もある。しかも同じ場所に……
 誰も変だと思わないのだろうか?……
 そんな小田原に僕は、十八年も住んでいた。
 そんな小田原の変なところが、なんとなく僕は好きである。