首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

ピアノのお稽古

 この歳になって、ピアノのお稽古に通う事になった。
 僕は、ミュージカルやアニメの挿入歌を時々、作詞する。
 ものによっては、数十万枚、売れたCDもある。
 僕は、脚本家で通っているが、一応、作詞家でもあるのだ。
 脚本を書く時は、BGM でクラシックを流す時もある。
 時には自分で、その脚本用に作曲したメロディを鼻歌交じりで、シナリオを書く。
 台詞にリズムが欲しいからだ。
 十数年前、歌がやたら必要になるアニメを書いた時は、作曲家にいちいち頼むのは、面倒だから、自分で作曲してやれと、MACのパソコン用、作曲ソフトと、キーボードを買った事もある。
 しかし、操作を覚えるのが面倒で、三日坊主に終わってしまった。
 それから十数年、作詞が優先で、後は作曲家にまかせる作詞ばかり書いていた。
 ところが、最近、たまたま、作曲優先で、それに歌詞をつける仕事をした。
 作曲家から、楽譜が届いた。
 だが、ここ、十数年、楽譜を読んだ事がない僕は、楽譜の複雑なところになると、読めなくなっていたのだ。
 キーボードで、楽譜を弾いてみようとしたが、今度は指が追いつかない。
 しかたなく、その時は、作曲家が送ってくれたピアノのデモ録音を、聞きながら作詞したが、重唱になるところなど、大変な苦労だった。
 僕のピアノの腕前たるや、バイエルさえ弾け無いほど錆びついている。
 世間様は、楽譜ぐらい、読み書き出来るだろうし、編曲は、編曲家に任すにしても主旋律のメロディぐらいピアノで弾けると思っている。
 あわてて、僕は、自分でこっそりキーボードでお稽古をはじめた。
 ところが、作詞、作曲の仕事が、入って来そうな状況になった。
 準備期間はかなりあるミュージカルである。
 しかし、楽器が弾け無いから、作曲は出来ません……とは、いまさらいえないし、頭の中に、メロディは出来ている。
 楽譜が書けなくても作曲する人は、少なくない。
 しかし、最低、ギターなり、キーボードで、メロディを表現は出来るだろう。
 鼻歌で、メロディを聞かせて、作曲した事にする人は、さすがに少ないと思う。
 せめて、自分が作曲した曲ぐらい、自分で弾いて聞かせたい。
 主旋律のメロディとリズムぐらいは、楽譜に自分で書いておきたい。
 こうなると、自己流のお稽古では、間に合わない。
 専門家について、速習でピアノを習うしかない。
 子供の頃に、一度は習ったピアノである。
 自分の作曲した曲ぐらい、なんとか弾けるようになるだろうと、淡い期待を持ちながら、いい歳をして幼稚園生なみのトホホな特訓を続けている。
 教訓……音楽に限らず、お習字、お花、お茶、踊り、スポーツの類いにしても、子供の頃にしたお稽古事は、どんな稽古事でも、たまには練習しておくべきである。
 いつ必要になるか分からない。