首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

タイムトラベルと懐かしさ

タイムトラベルものに付き物なのが、タイムパラドックスである。
 昔を変えると今が変わってしまうというやつである。
 実は、今、「鏡の国のゴーショーグン」という過去の自分に会うと言う内容の小説を書こうとしていて、ここ数年、タイムトラベル関係の映画は、かかさず見るようにしている。
 で、「サウンドオブサンダー」という、今、上映中の映画を見た。
 中生代にタイムトラベルをして恐竜狩りをしたら、ちょっとした手違いというか、足違いで、生物の生態系を変えてしまって、現代が大騒ぎになるという映画だ。
 原作がブラッドベリーの短編で、監督が、「カプリコン・ワン」のピーター・ハイアムズだというので期待して見たが、見ている間はそこそこのB級SFアクションだが、よく考えると、変な所だらけの珍品だった。
 字幕ではでてこないが、「カプリコン・ワン」……(火星着陸の実況中継が、NASAのやらせで、実は地球で中継したものだったという秘密をあばくストーリー。かなり面白い映画だった)……をネタにしたおふざけ台詞だけが、印象に残るという情けないSF映画だった。
 もっと面白いものが作れる監督なのに、残念である。
 タイムトラベルの手違いを直した証拠を残すために、中生代を撮った立体画像に主役の姿を、写しておくというのも、よくあるオチである。
 だが、この映画を見て、ふと思ったのだが、記念写真などに、いるはずのない人間が写っているという心霊写真と言うやつがある。もしかしたら、そこに写っている人は、未来からタイムトラベルしてきた人が、その証拠を残すために、先祖の記念写真に、自分を写したのかもしれない。
 同じタイムトラベル物でも、壊れたエアコンのリモコンを取りに、一日だけ、タイムマシンで前の日に行くという、「サマータイムマシンブルース」という日本映画が最近あったが、そのどたばたぶりのほうが、よほど気が利いていて、青春映画としても良くできていた。
 どことなく、「三丁目の夕日」なんかとは違った懐かしさを感じるのである。
 今、DVDで出ているが、SF映画にCGやら大袈裟なアクションシーンを期待しない人たちには、お勧めの映画である。
 タイムトラベルとは、関係ないが、「マカロニウエスタン800の銃弾」という映画も、期待しないでDVDで見たら、懐かしさという意味で、意外と拾いものだった。
 スペインあたりの、さびれた観光用のウエスタン村が、取り壊しになる。そこで、西部劇のスタントショーをやっていた、うだつの上がらない連中が、村を守るために、空砲でなく、実弾を手に入れて立ち上がる……といった内容だが、西部劇から離れられないおじいさんが大好きな子供が主人公で、どこか「ニューシネマパラダイス」を思わすなつかしさがある。
 この映画の製作者達も、そこらを狙ったのかもしれない。
 きっとやるだろうと思ったお約束のラストシーンも、案の定出てきて、なんとなく、にやりとしてしまう……この映画ほど、あからさまなラストシーンなら、嫌みも感じない。
 実は「ニューシネマパラダイス」のラストには、いかにも、泣かせようというわざとらしさを感じた僕だが、「マカロニウエスタン800の銃弾」のラストは、「まあ、いいか……」と、ほほ笑んでしまった。
 マカロニウエスタンだけでなく西部檄にノスタルジーを感じる人や、その他の映画が好きな人にも、暇つぶしには、もってこいの映画だと思う。