首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

現代工芸美術VSアニメ

 東京、渋谷の僕の仕事場は、ほとんど、ゴミの倉庫だが、それでも、壁の一面だけは開いている。
 いまそこには、現代工芸美術の染織画が、一枚、掛けられてあって、かろうじて、落ち着いた大人の部屋の雰囲気をかもしだしている。
 その作品は現代工芸美術では、かなり名の通った僕の実の妹の作品だ。
 美術関係の賞もかなりとっており、外国では個展も開かれているそこそこの有名人である。
 結婚しているので、僕と姓は違うが、知っている人になら、よく知られている妹だ。
 その染織画は、妹からプレゼントされたもので、普通なら、大切に飾っておかなければならない価値のあるものである。
 だが、僕には、他にも価値のあるものがある。
 僕の蔵書や、僕の書いた作品関係のもののほとんどは、小田原市立図書館に保管されているが、そうでないものもある。
 僕の書いたアニメ作品のスタッフからいただいたセル画や原画、ポスターの原画、ファンの方達が、手作りして下さったフィギュアーの類いだ。
 数点、貴重に思えるものは、図書館に保管していただいたが、全部は、とても無理である。
 それが、僕の押入れに眠っている。
 売れば一財産だと、友人からからかわれたが、下さった方達の気持ちを考えると、売るなんてとんでもないことだ。
 そんな事をすれば問題になるだろうし、第一、僕にも愛着があるから捨てるなんて事はとてもできない。
 小田原にいた時には部屋がいくつかあったので、分散して飾っておいたが、今のワンルームでは、とても無理である。
 しかも、それは、ミンキーモモやゴーショーグンや「ようこそようこ」だったりする。。
 それを壁中に掛けたり飾ったりしたら、いい歳をしたおじさんの部屋は、たちまち萌え萌えのオタク部屋にみえるだろう。
 しかも、向かい側の壁は、パソコンやら映像録音機器の山である。
 人が見たら、なんと思うだろう……。僕の年齢が年齢だけに、変なおじさんという噂が広まるかもしれない。
 それでも、彼らを押入れで眠らせるのはかわいそうである。
 ところが、飾るはずの壁には、現代工芸美術の染織画が、しっかりと自己を主張している。
 壁に、小さな一枚が掛かっているだけだが、十分存在感があり、他のものを、壁に掛けると。部屋、全てが、だいなしになりそうである。
 そこで、しかたなく妥協案を考えた。
 三カ月ごとに、その絵と、アニメ関係を入れ替えるのである。
 ある時は、落ち着いて気品のある壁……そしてまた、ある時は、萌え萌えオタクおじさんの壁……
 アニメ関係の部屋の時期に、僕の部屋を訪れた方は、くれぐれも勘違いしないで欲しい。
 特に、女性の方は、逃げないで欲しい。
 僕は、あくまで、アニメも含めた物書きを仕事にしてしまった、不幸な普通の男である。