未公開シナリオ「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー 第一回
`品は、1986年ヒットアニメ作品のパート2としてシナリオ完成後、製作会社の都合で、製作が中止、今のところ未発表になっている作品です。長編なので連載の形で掲載します。
なお、著作権は首藤剛志にあることを明記しておきます。
(仮名) 「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー (蜜の味)
その一
ストーリー 首藤剛志
脚本 首藤剛志
一回目主要人物
朝霧陽子 十八歳
ゼン 年齢不詳
男子学生
その他
N……ナレーションは陽子のモノローグ
× ×
○ パソコン ディスプレイ
「は」「る」と打ち出され「春」に変換される。
○ 陽子の部屋
机上のパソコンの画面を見つめている陽子。
ピアノ曲が聞こえてくる。
ディスプレイを見つめる陽子。
陽子のN「はる……か」
○ 春のイメージ
花が咲く。
男子高校生の横顔と陽子の横顔が、画面で交錯して……花畑を歩くセーラー服の陽子と男子学生
風が吹き、桜が散り、タンポポの綿毛が舞う。
陽子、うつむいている。
掛け去る男子生徒。
○ パソコン ディスプレイ
文字「みじかいはる」が変換されて「短い春」になる。
N「あまりにあっけなく春が終わり……」
○ 梅雨のイメージ 1
ピアノ曲が流れ……
雨の降るガラス窓を見つめる陽子。
窓の無効に、雨の高層ビル街。
窓辺の紫陽花の花が濡れている。
○ パソコン ディスプレイ
ぽつんと「つ」「ゆ」が梅雨と変換され……
○ 梅雨のイメージ 2
雨の新宿副都心を、セーラー服の陽子が、傘を差して歩いている。
ふと、立ち止まる陽子。
あの男子学生と見知らぬ女子高生が、相合い傘ですれ違う。
陽子は振り向く事も出来ず、立ち止まっている。
雨は、降り続いている。
N「私には、長い梅雨でした。でも、終わらせなければならないのです」
○ パソコン ディスプレイ
「梅雨」の文字の後に、「おわり」「終」「完」「END」「FIN」「FINE」「ENDE」
「おしまい」「おわり」「おわり」「おわり」「おわり」……
陽子の気持ちを表すように機関銃のように打ち出されている。
陽子は、キーボードを叩く。叩く。叩く。
そして、ディスプレイの「おわり」の文字が止まり、キーの叩く音が止まる。
○ 夏のイメージ
陽子は窓を開く。
日差しが飛び込む。
青々とした木々の葉から、梅雨の時期の水滴が落ちる。
陽子は、大きく伸びををした。
木漏れ日が陽子の上で踊る。
N「梅雨は終わりました、今、ポストに入れないあなたへの手紙を、やっと書けるような気がします」
○ パソコン ディスプレイ
「サヨナラ」の文字。
N「サヨナラ、春、そして、すてきな思い出をありがとう」
「ありがとう」の文字……。
そして「あさぎりようこ」が「朝霧陽子」の文字に変換して……
○ 陽子の部屋 (夜)
机上スタンドの灯。
陽子の部屋が、ぼんやりと浮かび上がっている。
ミニコンポから流れるピアノ曲……
パジャマ姿の陽子は、机上のパソコンの前で、うたた寝している。
その目には涙が光っている。
CDのピアノ曲が終わる。
どこからか、ミツバチの羽の音が聞こえ何かが陽子に近づいてくる。
年齢不詳のゼンの声である。
ゼンの声「陽子、もう泣くのはお止し……さあ陽子」
陽子のN「……(声に気がついて)えっ? 誰?」
○ イメージ レンゲ畑 (なぜか黄色いレンゲである)
一面のレンゲが絨毯の楊貴妃に見える
陽子のN「ここはどこ……? わたしはどこにいるの?」
陽子は空を飛んでいた。(映像は、陽子の見た目の主観で描かれる)
まるで、ホバーリングしながら、時として上下、左右、急に前進するような飛び方でレンゲの花
畑を飛んでいく。
そう、その飛び方は、まるで、蜜蜂のようである。
前方の丘に大きな木が見える。
ゼンの声「陽子、忘れたのかい、わたしを……」
地祇の瞬間、パジャマ姿の陽子は、木の下に立っている。
陽子「えっ?」
背後の声に、陽子は振り返った。
そこにゼンが立っていた。
神秘的な顔。吸い込まれるような目。
年齢はわからない。
いままで、会った事のない男だ。
陽子「あなたは?」
ゼン「忘れる筈はない……おまえがわたしをね……遠い昔の事だ……」
陽子は、ゼンの顔を見る。
会ったような気もする。おぼえのない気もする。
……この人は誰、だいいち、わたしは、今、どこにいるの?
陽子は何も分からず、とまどうばかりだった。
つづく。
なお、著作権は首藤剛志にあることを明記しておきます。
(仮名) 「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー (蜜の味)
その一
ストーリー 首藤剛志
脚本 首藤剛志
一回目主要人物
朝霧陽子 十八歳
ゼン 年齢不詳
男子学生
その他
N……ナレーションは陽子のモノローグ
× ×
○ パソコン ディスプレイ
「は」「る」と打ち出され「春」に変換される。
○ 陽子の部屋
机上のパソコンの画面を見つめている陽子。
ピアノ曲が聞こえてくる。
ディスプレイを見つめる陽子。
陽子のN「はる……か」
○ 春のイメージ
花が咲く。
男子高校生の横顔と陽子の横顔が、画面で交錯して……花畑を歩くセーラー服の陽子と男子学生
風が吹き、桜が散り、タンポポの綿毛が舞う。
陽子、うつむいている。
掛け去る男子生徒。
○ パソコン ディスプレイ
文字「みじかいはる」が変換されて「短い春」になる。
N「あまりにあっけなく春が終わり……」
○ 梅雨のイメージ 1
ピアノ曲が流れ……
雨の降るガラス窓を見つめる陽子。
窓の無効に、雨の高層ビル街。
窓辺の紫陽花の花が濡れている。
○ パソコン ディスプレイ
ぽつんと「つ」「ゆ」が梅雨と変換され……
○ 梅雨のイメージ 2
雨の新宿副都心を、セーラー服の陽子が、傘を差して歩いている。
ふと、立ち止まる陽子。
あの男子学生と見知らぬ女子高生が、相合い傘ですれ違う。
陽子は振り向く事も出来ず、立ち止まっている。
雨は、降り続いている。
N「私には、長い梅雨でした。でも、終わらせなければならないのです」
○ パソコン ディスプレイ
「梅雨」の文字の後に、「おわり」「終」「完」「END」「FIN」「FINE」「ENDE」
「おしまい」「おわり」「おわり」「おわり」「おわり」……
陽子の気持ちを表すように機関銃のように打ち出されている。
陽子は、キーボードを叩く。叩く。叩く。
そして、ディスプレイの「おわり」の文字が止まり、キーの叩く音が止まる。
○ 夏のイメージ
陽子は窓を開く。
日差しが飛び込む。
青々とした木々の葉から、梅雨の時期の水滴が落ちる。
陽子は、大きく伸びををした。
木漏れ日が陽子の上で踊る。
N「梅雨は終わりました、今、ポストに入れないあなたへの手紙を、やっと書けるような気がします」
○ パソコン ディスプレイ
「サヨナラ」の文字。
N「サヨナラ、春、そして、すてきな思い出をありがとう」
「ありがとう」の文字……。
そして「あさぎりようこ」が「朝霧陽子」の文字に変換して……
○ 陽子の部屋 (夜)
机上スタンドの灯。
陽子の部屋が、ぼんやりと浮かび上がっている。
ミニコンポから流れるピアノ曲……
パジャマ姿の陽子は、机上のパソコンの前で、うたた寝している。
その目には涙が光っている。
CDのピアノ曲が終わる。
どこからか、ミツバチの羽の音が聞こえ何かが陽子に近づいてくる。
年齢不詳のゼンの声である。
ゼンの声「陽子、もう泣くのはお止し……さあ陽子」
陽子のN「……(声に気がついて)えっ? 誰?」
○ イメージ レンゲ畑 (なぜか黄色いレンゲである)
一面のレンゲが絨毯の楊貴妃に見える
陽子のN「ここはどこ……? わたしはどこにいるの?」
陽子は空を飛んでいた。(映像は、陽子の見た目の主観で描かれる)
まるで、ホバーリングしながら、時として上下、左右、急に前進するような飛び方でレンゲの花
畑を飛んでいく。
そう、その飛び方は、まるで、蜜蜂のようである。
前方の丘に大きな木が見える。
ゼンの声「陽子、忘れたのかい、わたしを……」
地祇の瞬間、パジャマ姿の陽子は、木の下に立っている。
陽子「えっ?」
背後の声に、陽子は振り返った。
そこにゼンが立っていた。
神秘的な顔。吸い込まれるような目。
年齢はわからない。
いままで、会った事のない男だ。
陽子「あなたは?」
ゼン「忘れる筈はない……おまえがわたしをね……遠い昔の事だ……」
陽子は、ゼンの顔を見る。
会ったような気もする。おぼえのない気もする。
……この人は誰、だいいち、わたしは、今、どこにいるの?
陽子は何も分からず、とまどうばかりだった。
つづく。