首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

未公開シナリオ 「幻夢戦記レダ2」テイスト オブ ハニー 第2回

この作品は、1986年ヒットアニメ作品のパート2としてシナリオ完成後、製作会社の都合で、製作が中止、今のところ未発表になっている作品です。長編なので連載の形で掲載します。
なお、著作権首藤剛志にあることを明記しておきます。


    (仮名) 「幻夢戦記レダ2」  テイスト オブ ハニー (蜜の味)

                       その二

                     ストーリー 首藤剛志
                     脚本    首藤剛志


     二回目主要人物 
        朝霧陽子  十八歳
        ゼン    年齢不詳
        速水杏子  十八歳
        その他
        N……ナレーションは陽子のモノローグ


○ イメージ レンゲ畑 木の下
    陽子の前にゼンがいる。
陽子「あなたは……」
ゼン「忘れる筈はない……おまえがわたしをね……ほら、いつの時だったか、これを贈ったわたしをね」
    ゼンは陽子の手を取り、その手のひらに、銀の指輪を乗せる。
ゼン「二十歳(はたち)になる前に、この銀の指輪を贈られた娘は、きっと幸福になる。……わたしは確かに贈ったよ。遠い昔にね。さあ、思い出してごらん」
    陽子は、指輪を見つめる。
    ゼンの言う通りのような気もする。
    陽子は呟く。
陽子「……ええ、そんな気がする」
ゼン「さあ、わたしの元においで……それがおまえの幸福(しあわせ)だ」
    ゼンは、陽子を見つめる。
    すーっとゼンは陽子を抱きしめる。
    ふーっと陽子の目がくらむ。
    そのまま後ろに倒れる。
    だが、そこにはなにもない。
    レンゲの花の舞い散る中を、陽子はどんどん落ちていく。
    陽子は手のひらの上のぎんの指輪をぼんやり見る。
    銀の指輪が光る。
    銀の光は、どんどんふくらんでいく……。

○ 陽子の部屋  (朝)
    陽子は、はっと目を覚ます。
    朝陽が、カーテンのすき間から差し込んでいる。
陽子「夢か……」
    あたりを見回す。
    いつもの陽子の部屋だ。
陽子のN「そう、きっと夢だったんです」
    陽子は、カーテンをさっと開ける。
    夏の朝の住宅街の道が見える。
陽子のN「外はしっかり夏……高校、最後の夏です。過ぎた事はくよくよせずに、楽しまなきゃ……  ね」
    陽子はパソコンのプリンターから出ている用紙を取りまるめる。
    そして、自分で自分に頷き
陽子「うん!」   
    ゴミ箱に捨てようとする。
    と、机の上のある小さなものがきらりと光る。
陽子「え……?」
    それは、銀の指輪だった。
陽子「こんなことって……」
N「それは始めて見る指輪でした……あの夢の他では……」
    手のひらに乗せた指輪に反射した陽の光が、壁の状差しを照らす。
陽子「え……これ……」
    陽子は、状差しから絵葉書を取る。
    陽子は、絵葉書の写真を見て息をのむ。
    あのレンゲ畑の丘の上の木が写っている。
N「……あの夢で見た……他には……」
    陽子は、絵葉書を裏返す。
N「三つ壁村においで下さい……」
    陽子は、机の前に座る。
    指輪をはめて見る。
陽子「……ぴったり……」
    陽子は呟く。
陽子「三つ壁村……」
    指輪がひときわきらりと光る。

○ タイトル
    黒地の画面にパソコンの文字が、英文でティスト オブ ハニー と打ち出される。
    キャストやスタッフの名前は出ない。

○ いきなり街の騒音がうるさく聞こえ……行き交う人々、車の群れ。
    新宿の駅前である。

○ 高層ビル街に夏の日差しが光る。
    陽炎立つ舗装道路……。

○ スミレの咲く新宿西口公園。
    公演のベンチにセーラー服の陽子がが坐っている。
    バイク音とともに、陽子の前750CCのバイクが急停止する。
    ヘルメットを取ると長い髪の女の子の顔が現れる。
    陽子にどこか似ているが精悍な感じの女の子である。
    速水杏子……十八歳……陽子とは、全くタイプの違う行動的で気の強そうな女の子である。

                                       
                                    {その三につづく}         
    、