首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

誕生日パーティは、目指しとサバの塩焼き

 昨日は、妻の誕生日だったので、麻布十番で食事をした。
 その付近の有名店を食べ歩きしている義理の妹が、勧めてくれた事のある、かなり、高級店な雰囲気の魚料理店である。
 なぜ魚料理店で、誕生日の食事かというと、一年前まで小田原に住んでいて、新鮮な魚に飢えていたのである。
 実は、昨日、僕の食べたかった魚は、ナマ干しの目刺しだった。
 小学校四年まで、北海道育ちの僕は、シシャモが苦手だった。
 当時は、シシャモも安く、家の軒先につるして干している状態だから、今日もシシャモ、明日もシシャモで、うんざりとしていたのだ、
 ところでが東京に着て、ナマ干しの目刺しの焼いた時の香りと、なんともいえぬ柔らかさに夢中になった。
 高級な育ちの猫なら見向きもしないだろうが、僕は頭から尻尾まで食べてしまう。
 ところが、最近は、目刺しを食べさせてくれる店が、少なくなった。
 料理屋にとっては、雑魚の部類で、店に出すほどのものではないのであろう。
 かといって、家で焼くには煙が出すぎる。
 だいたい、煙の出る焼き魚店が、少なくなった。
 まして、目刺しを出す店などほとんどない。
 ところが、その魚料理店には、あったのである。
 勿論、目刺しという名前でなく、イワシ丸干しと言うメニューであった。
 さすがに目刺しほど小さくなく、一匹の大きさがその兄弟分ぐらいの大きさだが、それが四匹と、レモンと大根おろし、それに、小鉢がいくつか添えられて、こんなに高級に飾られたイワシ丸干し(つまり、目刺しの親玉)は見た事がなかった。
 妻や娘も、東京に来て、新鮮で美味い魚に飢えている。
 妻や娘は、小田原で食べ慣れているサバの塩焼きを頼んだ。
 拙宅は、あくまで、安上がりに出来ているのである。
 その料理店では、両方とも一番安いメニューであった。
 しかし、小田原の漁港の近くで、ただみたいな安い値段で、魚を食べていた僕には、なかなかの値段に思えた。
 麻布十番という土地がらを、考えると、それでも安い方なのだろうが、食べたのは目刺しの兄弟分と、サバの塩焼きである。
 まあ値段の事はいい。
 一年越しに夢見ていた目刺しを食べられたのだから……味も普通の目指し(いや、イワシ丸干し)だった。
 かくして、妻の誕生日パーティは、焼き魚定食……それも、目刺しとサバの塩焼きで終わったのであった。