首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

娘と広島と「空中庭園」

今日から、妻と娘は、高知県の土佐清水に、里帰りである。
 交通の便は、近くの外国へ行くより、遠い土地である。
 だが、その途中で、広島に寄りたいと、なぜか娘が言い出した。
 家の家族と、広島は、直接、何のかかわり合いもない。
 しかし、娘は原爆ドームや、その他、原爆の被害の遺品を見たいというのである。
 海外のテロや、紛争が、日常茶飯事のようにニュースになっている昨今である。
 小学五年生の、娘が、戦争や核兵器に関心を持つのは不思議でない気はする。
 しかし、戦後六十年、直接には戦争体験の無い日本である。
 そんな日本の小学生が、なぜ今、広島を 興味を持つのか?
 広島を意識するなとは、日本人として、決して言えない。
 けれど、僕も妻も、戦争を意識させる事を、娘に話した事は無い。
 日本が。太平洋戦争で、敗戦した事も、いや、太平洋戦争があったことも、教えた覚えが無い。
 第一、僕自身が、「戦争を知らない子供たち」なのである。
 十一歳の娘が、広島で、何を感じてくるのか、とても、気になっている。

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 DVDで「空中庭園」という日本映画を見た。評判のいい映画だったが、監督が、薬物の使用で、警察の厄介になり、上映館が少なくなってしまったといういわく付きの映画である。
 一種のホームドラマだが、家族とは所詮、空中楼閣のように、危なげな関係だということを、何の事件らしいものも起こらさず、そのもろさと頼りなさを、心理サスペンスの様に描いている。
 カメラは、その頼りなさを表現するように、いつも、ゆったりとゆれ、動き回る。
 絶えずほほ笑みを忘れ無い、小泉今日子さんの扮する家庭の主婦役が、不気味に上手い。
 映像テクニックも、精いっぱい頑張っている。
 確かに、家族というものの本質を描こうとしている気持ちは分かるし、映画としても出来がいいとは思うが、家族を持つものにとっては、気持ちのいい映画ではない。
 一応、ハッピーエンド風のラストショットも、とても、ハッピーエンドとは呼べない。
 一見の価値はあるが、僕に取っては対処に困る映画だった。