首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

もの書きと歯

二十九日は、脚本の打ち合わせ、二十九日の夜から、三十日にかけて小田原にいった。
「小田原文学に光りと風をおくる会」の会合があるからである。
 北原白秋を中心にした、座談会のようなものだが、会場が、娘の通っていた幼稚園だった。
 この幼稚園、小田原の文学に、かなり関わりのある場所だったのだ。
 それにしても、困ったのは、前歯が、ぽろりと抜け落ちてしまったのである。
 二十代の前半、喧嘩をして、僕の前歯は差し歯になっている。
 それでなくても、僕はものを書く時、自然と歯を食いしばるから、歯はいたるところぼろぼろである。
 そして時々、差し歯が何の前触れもなく抜ける。
 昨日もそうだった。
 あわてて、小田原の歯医者で、応急処置をしてもらったが、喋っている時、いつ歯が落ちるか気が気でなく、何を喋ったかあんまり記憶にない。
 僕の奥歯は入れ歯である。入れ歯を外し、ついでに、前歯が抜けると、喋る時、空気が抜けて、電話の時など、上手く聞き取れない時があるらしく、よく「今、お酒、飲んでいる?」と聞かれる時もある。台詞がろれって聞こえるようなのである。
 過去、大酒飲みで知られていたから、疑われて当然である。
 入れ歯は、面倒くさいので、仕事場では、外しているが、そんな時に限って、電話をかける用事がある。
 入れ歯を入れ忘れて、しまったと思うが、後の祭りである。
 ふがふが、ろれろれで、電話をしてしまう。
 ものを書くのを職業にする人は、必要以上に、歯を大事にしよう。
 三十年近くも、もの書きをしていると、月一回は、歯医者通いをしなければならなくなる。
 今更遅いが、僕がいつも悔やんでいる事のひとつである。