首藤剛志のふらふらファイル箱

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未公開作品「幻夢戦記レダ2」テイスト オブ ハニー15

   (仮名)幻夢戦記レダ2   テイスト オブ ハニー (蜜の味)

             その15      ストーリー 首藤剛志
                       脚本    首藤剛志
○ 岩陰                                    
     陽子達は、怪物をうかがう。                      
 陽子「北里君、あのままじゃ・・・・・ 」                      
 杏子「なんとかしてやりたいけど・・・・・ 相手があれじゃ・・・・・ 」          
 裕子「手があるかも」                             
 晶子「えっ?」                                
 裕子「あの型体、あの目、あいつ、大きいけど昆虫の一種だと思うの。だとしたら、あ
    の目は複眼、一つのものがいくつにも見える筈よ・・・・・ 」          
     胸のビジョンに怪物の型体が写る。                   
                                        
○ 森                                     
     怪物、健一を追いかける。                       
     と、その前に杏子が立ちふさがる。                   
 杏子「あたいが相手するぜ!」                         
     怪物の目には、何人もの杏子が見える。                 
 晶子「こっちもね、虫けらさん。」                       
     右手から、晶子が弓をかまえて出て来る。                
     いきなり、ガスのようなものが、左の方から吹き出す。          
     メカニックスーツから煙を吹き出しながら、裕子が立っている。      
 裕子「これ分かる? DDT(又はパラチオン)、早い話が、殺虫剤」       
     怪物、思わずひるむ。                         
     怪物の背後から、剣を持った陽子が、おどおどと出てくる。        
 陽子「わ、私だっているんだから」                       
     へっぴり腰で剣をかまえる。                      
     怪物の複眼が、ぎろりと後を向く。                   
     複眼の中に見える陽子の姿。                      
     シャーッ!                              
     怪物はいきなり棒立ちになると、くるりと体をかわし、陽子に向き直る。  
 陽子「!!」                                  
     怪物、陽子に襲いかかる。                       
陽子「こないで! こないで」                         
     めくらめっぽう剣を振り回す。                     
     だが、怪物の牙にはじかれ、地面に叩きつけられる。           
     間一髪……                            
     杏子が陽子の体をムチでからめて引っ張る。               
     空を切る怪物の牙。                          
     晶子が飛び出してきて、弓が怪物の目を撃つ。              
     裕子が、メカニックスーツに備え付けられた砲弾を、同じ場所を狙って撃つ。
     怪物の眼には、どれが杏子で、どれが晶子、裕子だか、紛らわしく動いて分か
     らない。                               
 杏子「かして!」                               
     杏子、陽子の手から剣をもぎ取ると、ジャンプ……怪物の頭に剣を突き立
     てる。                                
     陽子、顔を手で覆って震えている。                   
     地響きをたてて、怪物が倒れる。                    
     土煙の中に、杏子、晶子、裕子の三人が立っている。           
     ニッと笑いあう三人。                         
 健一「(呆然)女はつお~い!」                        
     杏子、陽子に剣を返す。                        
 杏子「役にたったよ、これ・・・・・ 」                       
 陽子「ううん・・・・・ それいらない。」                      
 杏子「え?」                                 
 陽子「私が持っていても、なんの役にも立たないわ・・・・・ みんなは、いろんな事出来る
    けど、わたしは0(ゼロ)・・・・・ そんなもの持っていても、足出まといにな  
     杏子、陽子に剣を返す。                        
 杏子「役にたったよ、これ・・・・・ 」                       
 陽子「ううん・・・・・ それいらない。」                      
 杏子「え?」                                 
 陽子「私が持っていても、なんの役にも立たないわ・・・・・ みんなは、いろんな事出来る
    けど、わたしは0(ゼロ)・・・・・ そんなもの持っていても、足出まといになるだ
    けだわ。」                               
 杏子「よせよ。これは陽子の剣だ。陽子になんの力もないなら、それこそ、これだけが
    頼りの筈だよ。」                            
 陽子「えっ?」                                
 杏子「さ、レダの戦士さん。」                         
     陽子、剣を握りしめる。                        
     晶子と裕子もほほえむ。                        
                                        
○ 川のほとり (夜)                             
     三日月が、川面を照らしている。                    
     健一が包丁の手さばきよろしく、魚を調理している。           
 健一「さ、出来た。刺身の盛り合わせに焼き魚に、ハチミツ水で煮た甘露煮……」
     木の葉の上に並べられた料理を見て、女の子達、目を丸くする。      
                                        
 杏子「へえ・・・・・ 」                              
健一「驚いただろう。包丁一本、さらしに巻いて、料理なら任せといてよ。」    
 陽子「なんか、とっても意外・・・・・ 」                      
 健一「意外なもんか・・・・考えてもみなよ。今は高校三年の夏休みだろ・・・・普通なら野郎
    は大学受験の勉強で、女の子追っ掛けてる暇はない。」           
 杏子「にしちゃ、やけに暇じゃん・・・・あんた。」                 
 健一「大学行かないからさ・・・・・ 」                       
 陽子「えっ? だって、うちの高校、受験校なのに。」              
 健一「俺が入ったんじゃない。親が入れたんだ。でも、猫も杓子も大学行って、それで
    どうなるっていうんだい? 一回しかない人生なのにさ・・・・だから、逆らうこと
    に決めた・・・・俺、板前になるんだ。もち、みんな反対さ。逆らうって結構面倒な
    んだよね。けど、決めたんだ。決めたらやるっきゃないよな。」       
     健一、包丁を見つめる。                        
     その横顔……                           
     陽子にとって、初めて見る健一の真顔である。              
 陽子「・・・・・ 」                                
     と、どこからか羽音の様な音が聞こえる。                
 陽子「えっ?」                                
     他の四人も気付く。                          
     頭上から、次々と昆虫の顔をした兵隊達が降りてくる。          
     ムチや、弓を取ろうとする杏子と晶子に、素早く槍を突き付ける。     
     健一、包丁をかまえておどおどしている。                
     槍を突き付けられた裕子。両手を上げる。                
     が、ひじの部分から銃口が突き出し、                  
 裕子「逃げるの!」                              
     いきなり連射する。                          
     兵隊達、ひるむ。                           
     裕子、地面や岩に弾ける銃弾に、あたふたしながら包丁を振り回す健一の手を
     握って、                               
 裕子「何やってんの、ボケ!」                         
     ダッと兵隊達の囲みを破って逃げる。                  
     杏子や晶子も、素早くムチと弓を取ろうとするが????         
     兵隊達が、足のすくんでいる陽子の喉元に槍を突き付けている。      
 陽子「ね、逃げて! 足手まといは捨てて・・・・・ 」                
     杏子と晶子、顔を見合わせて微笑し、かぶりを振ると、ムチと弓を捨てる。 
                                        
○森の上空                                   
     羽根付きのフローター(まるで空を飛ぶゲンゴロウ)の様な乗り物で、兵士に
     囲まれた、陽子、晶子、杏子の三人が連れて行かれる。 
                              (16へつづく)