首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

引きこもり続行中

 引きこもり二日目……仕事部場から一歩も出ず、電話は留守電にした。
 勧誘電話対策である。電話が鳴り、留守電のメッセージが聞こえ出すと、切れてしまう電話が何本かあった。
 僕に、本当の用事のある人は、メッセージを入れておいてください。すぐ、僕が出るか、後で、必ず、こちらから電話します。
 泥棒稼業の人も、留守電だからといって、安心して入ってこないでください。
 居留守ですから、僕とはち合わせする危険があります。
 と、いいつつ、引きこもって仕事をしようとしても、机に向かおうという気持ちになかなかなれない。
 一人でいると、ぼくの性格である怠け癖が、むくむくと沸き上がってくる。
 ベッドに寝転がって、友人から勧められたコミック「のだめカンタービレ」(二の宮知子著)を発売されている十四巻まで全部読んでしまった。クラシックを素材にしたコミックだが、僕も、子供の頃、ピアノを噛った事があるので、結構、面白しろかった。が、ふと我に返り、こりゃいかんと、キーボードで、練習を始めた。
 こちら、自慢じゃないけど、バイエルすらもとんでもない……というぐらいろくに弾けなくなっている。
 初心者とも呼べない腕前に成り下がっている。
 ああ、ピアノを続けておけば良かったと悔やむ事悔やむ事……ピアノだけじゃないぞ、絵だって子供の頃は上手だったはずだ。
 先生からおだてられ、画家になろうと思った事もあった。
 理科(科学)だって興味を持っていて……将来は、科学者になろうと思った事もあった。
 家庭科だって、成績が良く、特に料理は得意だったはずだ。
 料理人(いわゆるシェフ)になろうと思った事もある。
 それが、なんで、部屋に引きこもって、三流物書きを仕事にせにゃならんのか?……
 すべて、僕が怠け者だったせいである。
 本来。僕は、物を書く事が嫌いだった。それなのに、なぜ、物書きなのか?
 いろいろ、わけがあったにせよ、なにより、練習しないで、ペンや鉛筆などの書く物と紙さえあれば出きる物書きが、楽だったのが一番の理由かもしれない。
 楽な上に、運もよかったらしく、気がつけば物書きをしていた。
 時間は残酷である。
 いまさら、音楽や美術や科学や料理を、勉強しても間に合わない。
 そんな事を悔やんでいたら夜になっていた。
 なんとなくユウウツである。
 あ、いけないいけない。
 引きこもりをしているとウツ病になる危険性が多い。
 今日は、仕事はそこそこにして、テレビのお馬鹿なバラエティ番組でも見て気を紛らわそう。
 ついでだが、野球も好きである。阪神が好きだ。今、阪神の成績はそこそこだが、なにしろ、巨人がアホらしいぐらい勝ち続けている。野球中継で巨人が勝つのを見ると、それこそウツ病になりそうなので野球は見ない。
 東京は巨人ファンが圧倒的に多い。街ですれ違う人の明るい表情を見ると、みんな巨人が勝っているのを喜んでいるように思えて、けっ飛ばしてやりたくなる。
 やっぱり、当分、引きこもっている方が、精神衛生上にも、身の安全かもしれない。