首藤剛志のふらふらファイル箱

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未発表作品「幻夢戦記レダ2」……その19

(仮)「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー 19
                     ストーリー・脚本 首藤剛志

○ 神殿の広間                       
     包丁をはじき飛ばされて、健一、すくむ。                     
     その時、ゴンの眼を、杏子のムチがぴしゃりと叩く。           
     眼を押さえるゴン。                          
 杏子「今だよ。」                               
 健一「分かってらい。」                            
     健一、ゴンに飛びかかる。                       
     包丁が光る。                             
     ゴン、立ったまま、健一をにらみつける。                
     一歩、二歩、三歩、健一に近づいてくる。                
 陽子「北里君、逃げて!」                           
     しかし、健一は、ニヤリと笑って……                
 健一「男はでかけりゃいいってもんじゃないぜ。」                
     ゴン、まさかりを振り上げる。                     
     次の瞬間、ゴンの体、バラバラになり、骨だけ残して、床に崩れる。    
     骨の骨格は、昆虫である。                       
 健一「一丁あがり。こういうのを活き作りという・・・・・ ナハハハハ。俺、やっぱ才能あ
    んだな。」                               
     と、包丁を頭上にかかげる。                      
     ポカンと口を開けて見ていた陽子に、杏子が叫ぶ。            
 杏子「いくよ!」                               
 陽子「うん!」                                
     レダ像の前に、白い光が走り、ゼンが現われる。             
 ゼン「娘達よ、わたしが相手をしよう・・・・・ もはや、まやかしは使わぬ。力で、わたし
    を撃ち破るがよい。」                          
     ゼンが剣を抜く。                           
     陽子も剣を抜く。                           
 ゼン「どちらが、最初の相手かな。」                      
 杏子「もち、あたしさ」                            
     杏子、ムチをパチンと叩く。                      
     ゼン、杏子の方を向く。                        
     陽子、剣を握りしめる。                        
  N 「だめ、杏子・・・・わたし、わたし・・・・・ もう足でまといにはならない・・・・・ 」  
 陽子「相手はわたし!」                            
      陽子、ゼンに突っ込んで行く。                     
     ゼン、陽子の剣を払う。                        
     そして、一撃、二撃、剣を陽子の剣に叩きつける。            
     陽子、必死で受けとめる。                       
     陽子の剣が折れる。                          
     喉元にゼンの剣が、突き付けられる。                  
     その剣に、杏子のムチが絡みつく。                   
 陽子「杏子、わたしに構わず、早く指輪を!」                  
 杏子「そうはいくかい!」                           
     ゼン、宙を一回転すると、杏子の前に立ち、剣を振り降ろす。       
     ムチが切れる。                            
     杏子、肩を押さえて倒れる。                      
 陽子「杏子!」                                
     陽子、杏子に駆けより抱き起こす。                   
     健一が包丁を振り回して、ゼンに飛びかかっていく。           
 健一「このーッ、よくも、よくも。」                      
     ゼン、虚をつかれ、防戦一方になる。                  
     杏子は、陽子の腕のなかで虫の息である。                
 陽子「杏子、こんなことって! 冗談はよして!」                
 杏子「早く指輪を・・・・あの指輪で幸福になれるなら、それは、うん、あんたの方が似合
    っているよ・・・・」                            
     健一、ゼンの剣で払われ、床に叩きつけられる。             
 杏子「早く指輪を・・・・・ 」                           
 陽子「杏子!」                                
     陽子、かぶりを振る。                         
 陽子「いやだ、そんな指輪なんて!」                      
     陽子、ゼンをにらみつけて立ち上がる。                 
 陽子「許せない!」                              
 ゼン「残るはお前か?」                            
 陽子「あなたになんか負けない。」                       
     陽子の手には、折れた剣しかない。                   
     陽子、レダの像の剣を見る。                      
 ゼン「どうやって勝つつもりかな?」                      
 陽子「戦って・・・・・ 」                             
     陽子、折れた剣を、ゼンに投げつける。                 
     そして、レダの像に向かって走る                    
     レダの像の剣を取り、抜く。                      
 陽子「わたしは勝つわ、あなたに勝つ」                     
     レダの剣が光る。                           
     光の渦に包まれる陽子の体。                      
     古代服風の衣装が消え、レダの衣装、(神像と同じ格好)になる。     
 陽子「!」                                  
     倒れている杏子と、それを抱き起こしに駆け寄った健一も呆然となる。   
 陽子「消えて、わたし達の前から!」                      
     陽子、無茶苦茶に剣を、ゼンに叩きつける。               
     ゼンの顔に驚きが走る。                        
     ゼンの剣が宙を飛ぶ。                         
     次の瞬間、ゼンの体は、真っ二つになっている。             
     七色の光が神殿に渦巻く。                       
     レダの像が、真っ二津つに割れ、妖婉なレダの女王が現われる。      
 レダ「陽子さん、あなたこそ、新しいレダになる資格のある娘です。」       
 陽子「なんですって?」                            
 レダ「この世界は、たった一人の女王が全ての民を生み、支配して治めているのです。
    私も三〇〇年前、この世界の女王になって以来、何億もの子を生み続け、この世
    界を治めてきました。」                         
                                        
     インサート=神殿を囲む雲霞のような民衆、大群。            
                                        
 レダ「でも、私にも寿命が来ました。今、女王の交代の時が来たのです。私は三〇〇年
    前、銀の指輪を託したメスを野に放ちました……」          
                                        
     イメージ=レンゲの花畑。レダの女王の手の平から蜜蜂を放つ。      
                                        
レダ「そして、三〇〇年たった今、レダの血を強く引く娘達を集め、その子孫の中から、女王に相応 しい者を選ぶことになったのです。陽子さん、あなたは、その一人であり、あの男の記憶は、あなた達を引き寄せる蜜の香だったのです。しかし、蜜の香に惑わされるだけの娘では、この世界の女王として相応しくありません三〇〇年この国を支配し、子を生み続けるには、強い意志と力が必要なのです。そして、生き残って選ばれたのは、あなたでした。さあ、レダの指輪をつけ、この国の女王になるのです」          
     レダの女王は、指輪を陽子に差し出す。                 
 陽子「いらないわ、そんなの。」                        
 レダ「えっ?」                                
 陽子「何人の女の子が犠牲になったと思ってるんです?」             
 レダ「・・・・・ 」                                
 陽子「あなたには、わたし達の生き方、勝手に決める権利なんかないわ。それなのに・・
    ・・それなのに・・・・・ 」                          
     イメージ=白蝋化した娘達。                      
 陽子「わたし、あなたも、この世界も、絶対許せない。」             
 レダ「わたしに逆らうというのなら、あなたはわたしを倒すよりありません。」   
 陽子「ええ、わたし・・・・そのつもりです。」                   
     陽子、剣を構える。  (20へつづく)