首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

未発表作「幻夢戦記レダ2」 その20

 (仮)「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー その20
                   ストーリー・脚本 首藤剛志
○ 神殿の広間                       
     陽子はレダの女王に、剣を構える。                         レダ「あなたは女王になる娘・・・・わたしに剣を向けるのは、自分に剣を向けることにな
    るのですよ。」                             
 陽子「わたしは、あなたじゃない。わたしは朝霧陽子です!」           
 レダ「そう・・・ そうなの・・・・でも、あなたは逃げられない・・・・・ この世界から・・・・」 
     レダの形相が変り、巨大な女王蜂になる。                
     陽子に飛びかかる。                          
     陽子も、突っ込んで行く。                       
     倒れている杏子と健一、ただ見守るばかりだ。              
     女王蜂の眉間に、レダの剣が突き立つ。                 
     女王蜂、地響きを上げて床に落ちる。                  
     陽子、手に持った剣の鞘を、二度と触りたくないというように捨てる。   
     女王蜂の姿が、レダに戻り、次第に、年老いてひからびていく。      
 レダ「これでいいのです。女王は二人いりません。前の女王を倒してこそ、レダの資格
    があります・・・・。」                           
     レダの手に中の指輪がきらめく。                    
     神殿が……。 レンゲ畑が……。 三つ壁の屋敷が……。  
     三つ壁村が……。                         
     全てが消えていく。                          
     陽子、闇へ向かって落ちていく。                    
     飛び散る、黄色いレンゲの花。                     
                                        
○陽子の部屋                                  
     陽子は目を醒ます。                          
     机のうえのパソコンの前で、うたた寝をしていたのだ。          
     朝の光が眩しい。                           
 陽子のN「あれは夢?・・・・・ あ・・・・」                      
     パソコンの前に、キラリと光るものがある。               
     銀の指輪……。                           
     陽子、ぼんやりと指輪を見つめる。                   
○新宿                                     
     行き交う人々・・・ 車・・・・                        
     夏の日差しが高層ビルの窓に踊っている。                
○公園                                     
     すみれの花が、咲き乱れている。                    
     ベンチに、セーラー服の陽子が坐っている。               
     杏子の乗った750cc のバイクが止まる。                 
 杏子「陽子、旅行だって? 一人で?」                     
 陽子「高校最後の夏、うん、ちょっとセンチメンタル・・・・。」           
 杏子「ま、よかろう、それも。」                        
 陽子「あなたも行かない?」                          
 杏子「悪いけど、今年の夏はちょっとヤボ用。」                 
 陽子「え? あ・・・ そう。」                          
 杏子「悪いね・・・・」                              
 陽子「うううん・・・・あ・・・・」                          
     陽子、杏子の指輪に気付く。                      
 杏子「え? あ・・・・これ?」                          
 陽子「レダの指輪・・・・」                            
 杏子「あん? なんのこっちゃ、これ、だち公からもらったんだ。安物だけど、つけて
    やんなきゃかわいそうだろ・・・・。」                    
 陽子「そう・・・・」                               
 杏子「どうかしたのかい?」                          
 陽子「ん? なんでもない、うん。」                      
                                        
○高層ビルの街路                                
     陽子、ぼんやりと歩いている。                     
 N 「やっぱり夢だったのでしょうか・・・・・ でも・・・・」              
     指輪を見る。                             

○街路                                     
     街路の向こうから、例の男子学生と女子学生が、にこやかに笑いながら歩いて
     陽子とれ違う。                            
 N 「・・・・・ この指輪は、誰が・・・・・ 誰? 誰かがいる筈・・・ 」          
     陽子、振り返る。                           
 陽子「!!」                                 
     男子学生のカップルの動きが止まっている。               
     そればかりではない。街の全てが止まっている。             
     まるで、スティール写真だ。                      
     街路の花壇のすみれが、黄色いレンゲに変っている。           
     いつのまにか、高層ビル街は、至る所、レンゲの畑だ。          
     どこからか、羽根の音が聞こえる。                   
     陽子、歩き始める。                          
     次第に足早になる。                          
     更に大きくなる羽根の音……。                   
 陽子「あっ!」                                
     首筋を押さえる。                           
     何かが突き刺さったのだ。                       
     恐る恐る、首筋にあてた手の平を広げる。                
     蜜蜂がいる。                             
     陽子、後を振り返る。                         
     上空を見上げる。                           
     高層ビルを覆い隠すような蜂の大群、                  
     陽子、走り出す。                           
     蜂の群れは動きだし、陽子を追い掛ける。                
     陽子、地下道の階段を駆け降りる。                   
                                        
○新宿地下道                                  
     走る陽子。                              
     通行人も車も、ピクリとも動かず、全ての時が止まっている。       
     陽子、地下道の出口へやってくる。                   
     蜂の大群が舞っている。                        
     陽子、逃げる。                            
     いつのまにか、そこは東口の地下だ。                  
     地下出口から、のぞく東口の空も、蜂の大群だ。             
     陽子は走る。走る! 走る!!                     
     地下道の前方に、蜂の大群が入って来る。                
     陽子はすくむ。                            
     蜂の大群が集まり、人間の体になる。ゼンである。            
     その後に、レダの国の兵士達が並んでいる。               
 ゼン「陽子、お前は逃げられない・・・・。」                    
 陽子「生きていたの? あなた。」                       
 ゼン「お前がわたしを忘れぬ限り、わたしは死なぬ。そう、陽子・・・・いや、レダの女王
    よ。レダの国を治めているのは女王ではない、男のわたしなのだ。お前は、わた
    しの奴隷だ。お前は、わーたしの成すがまま、レダの国を支配し、レダの子孫を
    生み続けるのだ。」                           
 陽子「いや、絶対いやだ!」                          
     陽子、逃げる。                            
     ゼン、音もなく動き、陽子を追う。                   
     兵士たちも後に続く。    (21につづく)