首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

引きこもっても仕事が進むわけではない

 引きこもりが続いている。
 食料がつき、緊急災害用の、非常食にまで手を出さなければなりそうな状態になってきた。
 歯のあまりよくない僕に、非常食用の乾パンはちょっときついので、明日は、買い物だけには出かけるつもりだ。
 引きこもって書いているのは、十年以上、考えていたシリーズ小説の完結編だ。
 いつも、書き上げようと思っていた時に、別の急ぎの仕事が入り、おまけに、僕の人生観が、ある程度、年齢を過ぎないと書けないような内容になりそうだったので、ここまで伸びてしまった。
 ストーリーも構成も完全に出来ている。
 しかし、僕の書くものでは、しばしば起こる事だが、登場人物が「私はそんなことはしない」「私はそうは考えない」「私はそうは感じない」と、反乱を起こす時がある。
 今が、その、もめている最中である。
 本来、作家は小説を書いているいわば神様だがら「ワシのいうように動け!」と、作家の思いどうりにやれるはずである。
 しかし、僕が作り出した登場人物は、それぞれ個性的だし、いままでも、こちらが作ったストーリーの中で、自分勝手に動いてくれていた。
 それが、このシリーズの特長でもあった。
 その最終回である。登場人物には自由に考え、感じ、動いてもらいたい。
 こちらだって、最終回のつもりだから、それなりのものにしたい。
 つまり、作家と登場人物が、お互い納得しないと、書けない作品なのだ。
 小説としては、ほとんど出来たが……これでいいのか……、もうすこし登場人物館との相談が必要である。
 これが、僕にとっては、にっちもさっちもの煮詰まった状態なのだが、こんな時は、引きこもっていると、気がおかしくなりそうになる。……で、音楽を聴く。
 こんな時は「戦国魔神ゴーショーグン」の登場人物ンブンドル氏のように、クラシックなど聞かない。 もっと気楽なやつである。
 最近、ひいきにしているのがクレイジーケンバンドの曲だ。
 何をわめいているのか分からない最近の歌にしては、このグループの歌は聞き取りやすいし曲の種類は、ソウル、ラテン、ホップ、もろもろと様々がミックスされているが、なぜかメロディが分かりやすい。
 何より面白いのが歌詞である。ご本人はコミックソングのつもりで歌っているわけではないのだろうが、突然、奇妙な単語や、おかしな歌詞が紛れ込んで、それが、曲全体を壊す事なくモンタージュされている。
 他愛の無い人生応援や恋愛奨励の歌詞を、一度聞けば飽き飽きするような単調なリズムで、がちゃがちゃわめくだけの小室グループ以後のポップスの中では、秀逸な歌詞を持っているグループである。
 大袈裟に言えば、森高千里以来の歌詞才能では無いかとすら思う。
 ともかく、一年ほど前のアルバム「ソウルパンチ」も楽しめる。笑わしてくれる。人生も歌っている。まるで、現代の落語を聞いているような気分になる。
 ポップス界では有名な存在なのだろうが、その世界に詳しくない僕には、メロディ・リズムがなつかしくもあり、それがまた今どき、新鮮である。一度聞いて見ても悪くは無いと思う。
 今の僕は、小説に手間取ってはいるが、別に悩み苦しんで書いている訳ではない。
 けっこう、へらへらと、クレージーケンバンドのような曲をバックに流しながら、登場人物と漫才しているような気分でお気楽に引きこもっている。