首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

演劇志望の十八歳

昨日。土曜日。二月にBunkamuraのロビーラウンジで雑談した「超くせになりそう」の監督、遠藤氏と、又、昼食を取りながら雑談した。
 その日が、遠藤氏が現在演出しているアニメのダビングを近所にある渋谷の録音スタジオでする最終日だという。
 十八歳になる娘さんも一緒だった。
 その娘さん、演劇の役者志望で、僕が舞台のミュージカル等を書いている事もあって、僕からいろいろ演劇の世界の話を聞きたかったらしい。
 僕自身、ここ数年、ハイテーンの人とまともに話した事がなかったので楽しかった。
 ところで、演劇の世界は厳しい。実力や容姿だけではどうにもならない。運が大きくものをいう。浮き沈みも激しいし、食べて行く事すら難しい。
 過去、いろいろな劇団に所属する何百人もの役者のたまごに出会ったが、まともに役者として生き残っているのは、五本の指にも満たない。
 二・三十年前なら、「役者を志望するのは、良く考えたほうがいいよ」と、忠告する所だが、今の僕は違う。
 今の若い人は、自分のやりたい事、自分の夢がなんであるかすら分からない人が多いという。
 理由はいろいろあるにしろ、僕が思っているより、今の若い人の精神的な荒みはどんどん広がり進んでいるらしい。
 それが、表面上はフリーター、ニート、引きこもりという形で現れてくる。
 四十代のフリーターやニート、引きこもりも少なくないという。
 社会問題などと騒ぐ余裕などなく、それがすでに現実となって深く進行しているという。
 このままだと、日本の未来は絶望的に思える。
 最近の若い者は……と文句をいうより、むしろ、自分のやりたい事、夢を持って、その方向に向って頑張る若い人を、暖かく見守るべきだという気持に僕はなっている。
 十八歳の娘さんの目は輝いていた。
 それが難しい道だとしても、それに向って進んで行く若い姿はまぶしい。
 僕が出来る範囲の事なら、今後もいろいろアドバイスしてあげたいと思う。
 といっても、この世界、本当に本人の力と運次第で、僕の力でどうなるものでもないのだが、若い人のやる気のある姿は、いささか疲れた僕を元気づけてくれる。