首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

未発表作「幻夢戦記レダ2」テイスト オブ ハニー 最終回

この作品は、1986年ヒットアニメ作品のパート2としてシナリオ完成後、製作会社の都合で、製作が中止、今のところ未発表になっている作品です。長編なので連載の形で掲載します。
なお、脚本の著作権首藤剛志にあることを明記しておきます。

(仮題)「幻夢戦記レダ2」 テイスト オブ ハニー 「蜜の味」(最終回) 

                     ストーリー・脚本 首藤剛志


○陽子とゼン、激しく剣を交わす。                        
    新宿で……シーョーウインドーを。                   
    春の公園で……男子学生との別れの場で。               
    街の街路……男子学生とのすれ違いの場で。              
    三つ壁村のレンゲ畑で……。                      
    屋敷の中で……。                         
    レダの国の森の中で……。                     
    砦で……。                            
    神殿で……戦う。闘う。たたかう。       
    陽子は剣をかまえ                                 
 陽子「私は負けない。絶対、あなたなんかに!」                 
    陽子の剣は、建物はおろか、映像の背景すらも切り裂いていく。       
    そして、遂に……                          
    ゼンの胸を剣が突き刺す。                        
 ゼン「ギャーッ!」                              
                                        
○新宿、ショーウインドーの前                          
    陽子の剣が、ゼンの胸を突き通している。                 
    全ての風景がゆがんでいく。                       
    女の子達の声が聞こえる。                        
 杏子の声「やったね!」                            
 晶子の声「わたしもやるわ・・・・」                        
 裕子の声「負けない・・・・」                           
 陽子「(頷く)ウン」                             
     剣が消え、陽子のレダの衣装はいつしか、セーラー服に戻り……。      
     やがて、全てが闇に消える。                      
                                        
○陽子の部屋                                  
     机に上のパソコンの前で、目を醒ます陽子。               
     陽子の顔……。                                
     朝の光……。                           
     陽子、手を見る。                           
     指輪はない。                             
     テーブルの上にも指輪はない。                     
     状差しにも絵はがきはない。                      
     ふっと息を吐く。                           
     パソコンのディスプレイを見る。                    
     「さようなら・・・・ありがとう・・・・朝霧陽子」の文字。           
 N 「今のも夢。そうなんだわ。夢・・・・よね。」
     陽子、パソコンの文字をさーっと消去する。             
                                        
○公園                                     
     ベンチに陽子がぼんやりと坐っている。                 
N 「そして、秋になり新学期が始まりました。                 
     向こうから、健一が走って来る。                    
 健一「よう、夏休みどうだった? 元気にやっとったかね。」           
 陽子「ぼちぼちかな・・・ 」                           
 健一「で、何? 用事って。めずらしいね。」                  
 陽子「うん、あなたに申し込まれていたことなんだけど。」            
 健一「百二十三回申し込んだヤツ?」                      
 陽子「ええ」                                 
 健一「ああ、あれ、いいんだ。君にはかなわない。僕なんか似合わないよ。君にはね」
 陽子「えっ?」                                
 健一「大切にね。君の世界を・・・・これ、落とし物・・・・」              
     健一、銀の指輪を渡す。                        
 陽子「!・・・・」                                
     バイクが二人の横に止まる。                      
     杏子が乗っている。                          
 健一「じゃあ・・・・ね。」                            
     健一、バイクの後に飛び乗る。                     
 陽子「杏子、これ・・・・どういう情況?」                     
 杏子「へへ、板前志望なんてさ、今時、ダサイけど、食うには困んないと思うしさ・・・・
    笑わないでくれよな・・・・。じゃあ」                    
     バイクを発進させる。                         
     陽子、ふっと笑う。                          
 陽子「ま、いいか・・・ 」                            
     陽子は指輪を見る。                          
     肩をすくめる。                            
 陽子「もうこれ・・・ いらな~いっと!」                     
     陽子、指輪を投げる。                         
     陽子、元気よく歩き始める。                      
 N 「今度は本気で、あなたに さようなら を云います。そして、わたしは、きっと
    新しい何かを見付けるでしょう・・。その自信がわたしには、今、確かにあります
    ・・・ さようなら・・・ ありがとう・・・ あさぎりようこ」            
     パソコンの文字が打ち出されて行く
                                                    
     「 さようなら ありがとう                       
         あさぎりようこ  」
                    
     あさぎりようこが朝霧陽子に変換されて……             
                                        
○エンドタイトル                                
     セーラー服の陽子、鞄を振り回すようにして元気よく、街路を歩いて行く。 
     すれ違う人々の中には、杏子がいる、晶子がいる、裕子もいる。      
     だが、互いに気付かず、すれ違っていく。                
     それぞれの明るい表情。                        
     陽子の姿、雑踏の中へ消えていく。                   
                                        
                     …… エンド ……