首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

ドイツミュージカル映画「ライン・ワン」

 ある程度仕事をかたずけて、旅行に行ったつもりだったが、帰ってみればごちゃごちゃと細かい仕事が待っていて、ブログを書いている時間があったら原稿を書けといわれそうで、困っている今日この頃である。
 それでも、しっかり、ビデオやDVDは見ていて、レンタル店で珍しいビデオを見つけて借りてきた。
 「ライン・ワン」というドイツのミュージカル映画である。
 ベルリンの地下鉄に乗った女の子が、地下鉄の駅や電車の中で、歌と踊りで描かれる様々な人生模様を見るという話だ。
 ドイツ製のミュージカルというだけでも、かなりな珍品だと思うが、ミュージカル映画としての出来うんぬんより、地下鉄に乗った人々の風俗や唄われる歌詞が興味深かった。
 なぜなら、このミュージカル、1988年に製作されたドイツ映画なのだ。
 若い人にはピンとこないだろうが、この映画が作られた翌年に、ベルリンを東西の二つに分けていた壁がなくなり、更にその翌年の1990年に、東ドイツと西ドイツに引き裂かれていたドイツがひとつの国になる。
 ほとんどの人が、20世紀中に東西ドイツがひとつになるとは思っていなかった。
 ベルリンの壁が破られたのは、ほぼ突発的な事件で、誰も止める事が出来ず、やがて、それは、ソ連の崩壊へつながっていく。
 そんな歴史的な大事件の起こる前の年のベルリンの人々のかかえる心情や社会問題が、このミュージカルを作った人達も、翌年にそんな事件が起こるとは思いもせずに、この映画には描かれてしまっているのである。
 それが証拠に、この映画に、ベルリンの壁についての露骨な言及はでてこない。
 ヨーロッパの現代史に興味のある人……ついでにヨーロッパに旅行して、ユーロの強さを実感して目を丸くしている人には、見る価値のあるミュージカル映画かも知れない。
 この映画は歴史や政治などをテーマにはしていない。
 ベルリン市民の当時の日常を、リアルでなく、ミュージカルで見せているだけだ。
 それだけに、なおさら興味深い映画だった。