首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

ドイツが気になる訳

 なぜ、僕がドイツ統一前の、ミュージカル映画「ライン・ワン」に興味を引かれたかというと、高校時代からの女性友達が、30年以上前のある日突然、当時、分裂していたドイツの西ドイツに行き、その後、ドイツ人と結婚……そのままドイツのニュールンベルグに定住、ところが、唐突に、5年おき、10年おきぐらいの間隔で、日本に来る度に、僕に連絡をとってきて、その時々のドイツの事情を話てくれたからだ。
 僕も、ヨーロッパに行った時は、ドイツに行き、唐突に連絡を取り、家に泊めてもらって、彼女のドイツ人の夫とも、日本とドイツについて話あった事もある。
 それから、しばらくして、ドイツが統一され、その夫も含めドイツ国民のほとんどが歓喜したが、ドイツ人と結婚した日本女性にはドイツ国民ほどの身に迫った感動はなかった。
 むしろ、経済的に貧しい東ドイツが西ドイツと一緒になった混乱にとまどっていたようだ。
 ドイツ国民が喜べば喜ぶほど、その女性には「自分は、日本人なのかドイツ人なのか?」
 という、困惑のようなものが大きくなったのが、僕には良く分かった。
 その後、ソ連崩壊などヨーロッパの事情は、急激に変化した。
 チェルノブイリ原発事故も、ドイツにとっては日本が感じるどころではない身近な事件だった。
 その後も、僕が忘れかけた頃、その人は日本に来て、いつも唐突に僕に連絡をとってきた。
 だが、僕が、結婚し子供がいる事を知った後は、連絡はなくなった。
 こちらからも、連絡をする気はない。
 日本を出てから30年以上のドイツでの人生を本にでも書いてみたらと、言った事があるが、答えはナイン……ノーだった。
 90歳までは生きるつもりだから、これからまだ何が起こるか分からない……との事である。
 今、その人が日本にいるのかドイツにいるのかすら僕は知らない。
 先日、パリに行った時、ニュールンベルグの電話番号は知っていたが、もちろん電話しなかった。
 もう終わった事だが、そんな訳で、ヨーロッパの国の中ではドイツは、僕にとってなんとなく気になる国なのである。