首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「ラブソングができるまで」

 少し品がない言い方かも知れないが 、もし僕が三十代で独身だったら、片っ端からガールフレンドを誘ってこの映画を見ることにして、映画を見る前にその日の夜のシティホテルを二人の為に予約しておいても、ほとんど大丈夫?だと自信を持って言えるぐらい良くできたラブ・コメディである。
 ともかく、カップルで見たら、とても気分良く映画館から出て来る事ができると思う。
 後は、この映画を話題にしながら食事でもして、気の利いた口説き文句のひとつも言えばOKだなと、余計な妄想までしてしまう。
 ストーリーは別に新しいところはない。
 むしろ、お約束通りで、ありふれているといっていい。
 観ている人の思っている通りに話が進み、何のひねりもない。
 だが、そこがこの映画のいいところである。
 ストーリーを、ひねる必要なんかないのである。
 ともかく、登場する二人の主役俳優ヒュー・グラントドリュー・バリモアが、この作品の役の為に存在していると思えるほど、ぴったりと柄に合っていて気持がいい。
 周りを固める脇役も、嫌になるほど、それぞれの役にぴったりはまっている。
 この映画のユーモアにセンスが合う人なら、最初から、にこにこほほ笑みながら、あっという間に、時間が経ち、え……これで終わり?……映画館が明るくなっても、もっと見ていたいと思うだろう。
 僕からすれば、ラブコメ映画として、ほとんど絶賛に近いのだが、もっとも、それは、僕に限っての事かも知れない。
 ともかく、僕のセンスと映画のセンスが、合ってしまったのだ。
 八十年代にブレイクしたものの今は落ちぶれた男性歌手と、過去に、僕から考えるとたいした事にも思えないトラウマを持った作家志望の女性が、二人で作曲作詞して、今時のカリスマアイドル歌手(この歌手役もいい)が唄うラブソングを作るという話なのだが、よく考えると、随分大胆な映画だなとも思う。
 二人の作るラブソングが、この映画を観る2007年の観客にとっても素敵な曲でないと、この映画はぶち壊しである。
 八十年代の曲が耳に慣れている僕には、この映画で作られる歌は、とても心地よく聞こえた。
 だから、僕にとってはこれでいいのだ……だが、他の今時の若い人にとってはどうなのだろう?
 この映画を観ているカップルの男女達の事が気になって仕方がなかった。
 なんとも残念なのは、この映画のセンスに同調した僕にとって、今は21世紀……僕は30代でもなく、独身でもなく、しかも、男女カップルで観るのに最高の映画を、一人でぽつんと観ているおじさんなのであった。
 この映画を楽しんでいる自分が、なんとなくわびしかったですよ……。