首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「狼少女」

これ以上、「獣装機攻ダンクーガノヴァ」という自分の関わったアニメのPRは止めにして、本当にお勧めできる最近の日本映画の話をしようと思う。
 僕の知る限り、ほとんど話題に出てこなかったし、僕が観たのもレンタルDVDである。
 劇場公開はされたのだろうが、おそらく小規模だったのだろう。
「狼少女」は、題名から想像されるようなホラー映画ではない。
 昭和の時代の子供たちのある時期を、子供の目線から観た映画である。
 この作品、昭和のある時期、ある小学校にやってきた転校生(子供にとっては転校生という存在自体がミステリアスだった)と、……神社のお祭りなどで見かけた「見せ物小屋」の狼に育てられた狼少女……もちろんインチキ……しかし、子供から見たらとても不思議な存在に、右往左往する主人公の小学生とその周囲の子供たちを、すこぶる上手に描いている。
 大人から見た子供ではなく、子供から見た子供を、ここまで描けた作品を最近見た事がない。
 ストーリー自体は、よく考えれば、いや、よく考えなくても、描かれている大人たちが、ご都合主義で首をひねる所もある……狼少女のような女の子が、日本の児童法で、許されるのか?……学校の教師達は、狼少女の素性を知っているのかなど……大人としては、つっこみたくなる所はいっぱいあるのだが、子供の目線から、とらえた作品だからそれが気にならない。
 大人にとってみれば何でもない事が、子供にとっては、不思議でいっぱいの世界になる。
 この映画に登場するいじめられっこの少女のメイクなど、どろだらけで汚すぎる気もするが、子供の目から見たら、これでいいのかもしれない。
 昭和の中後期に子供時代を過ごした人なら、この映画の子供たちをなつかしく思い出すだろう。……ああ……あんな子、こんな子、いたよね……と。
 CG駆使で描かなくても、昭和へのノスタルジーは描く事が出来るのだ。
 しかも、テーマは、現代の子供たちにもしっかりリンクしている。
函館港イルミナシオン映画祭第6回シナリオ大賞長編部門グランプリ作品という、僕が知らない賞を取った作品で、おそらく、シナリオ賞をとったから、映画化された作品だと思うが、それだけの魅力がある脚本だと思う。
 脚本の勉強にもなるだろう。
 つまり、子供の世界を描くなら、目のつけ所が大人からの目線でなく、子供からの目線でなきゃあ……である。
 こんな脚本を書ける人が、例えば「魔法のプリンセス・ミンキーモモ」のエピソードを書いてくれたら、おもしろいだろうなあ……僕としては思う。
 ただ、ラストシーンの描き方だけ、大人の視線になって、シナリオの教科書のように、お涙頂戴になってしまったのが、少し残念だが、レンタル店で見つけたら、観ても損のない掘り出し物だと思う。
ちょっと検索してみたら……
ルーカス2006 第29回 国際子供映画祭:フランク フルト/ドイツ CIFEJ審査員大賞&ドン・キホーテ賞のダブル受賞
 の作品だそうである。
http://www.eiga.com/official/ookami/index.html