首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「眉山……びざん……」

 阿波踊りを背景にした、死期の迫った母と娘のお涙頂戴映画である。
 娘は、いわゆる不倫で産まれた子で、父は死んだと聞かされているが、偶然、生きている事を知り、死期の迫った母とせめて最後の別れをさせようとする。
 後半は、これでもかこれでもかと、お涙頂戴シーンが連発される。
 劇場は水曜、女性千円の日だからか、結構、女性客が多く、あちこちから、すすりなきの声もする。
 演出は、手堅く女性の涙腺を刺激しているようだ。
 主役の松嶋菜々子さんもきれいに撮れている。
 だが、なんだか僕には違和感があった。
 最初から、お涙頂戴映画だと分かっているから、安っぽいストーリーだとも、ありがちなプロットだとも言わない。
 けれど、松嶋菜々子さんに合わせたからかもしれないが、この娘さん、三十二歳のキャリアギャルで独身ということになっている……昔ならお局さんといわれる歳ごろである。
 大人すぎるほど大人である。
 彼女がハイテーンや二十代前半なら、このお涙頂戴も納得できる気もするが、三十二歳で、いまさらのように、子供の頃の父の面影を思い出したり、母親孝行したり、父親探しをしたり、病院の医師と清純ぽい恋愛をする……これって、ちょっと、年歳がアンバランスじゃないか?
 同じ状況になったとしても、もうちょっと、大人っぽい行動をとるんじゃないのかなあ?
 それとも、今時の女性は、このお涙頂戴が普通に思えるほど精神年齢が低いのだろうか?
 三十二歳が女性の結婚適齢期のこの映画は、歳のせいか涙もろくなっている僕を泣かす事はできなかった。
 お涙頂戴に年齢は関係ないと言われれば、返す言葉もないのだけれど……