首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

プロット「幻夢戦記レダ2」その1

 このあらすじ(プロットまたはシノプシスとも呼ぶ)は(仮題)「幻夢戦記レダ2」テイスト オブ ハニーの原形になったものです。
 テレビではなく映画のような規模の大きいものは、まず、プロットが必要とされる場合が多いようです。
 このプロットを元に、様々な関係者によって検討され(仮題)「幻夢戦記レダ2」テイスト オブ ハニーのシナリオが書かれました。
 興味のある方はプロットが、どのようにシナリオに変わるか参考にしてください。
 でき上がったシナリオは、すでに、この書庫に掲載されています。
 登場する名前は、密陀からレダに変更されるなど色々変わっています。
 なお、このプロットの著作権首藤剛志にあります。

                                        
               (仮題)「幻夢戦記レダ2」 
               ハ ニ ー ト ラ ッ プ (蜜の罠)
                    プロット
                          作   首 藤 剛 志     
              (その1)                                        
 
 霧野陽子に、高校生活最後の夏……。
 胸弾む恋の季節だというのに、陽子の気持は、秋の終わりの様に、ブルーだった。
 失恋……そう、大人しい引込み思案の陽子に十七歳になって始めてできたボーイフレン
ドと、昨日、別れてしまったのだ。
 陽子は、ボーイフレンドが、ワープロを使って書いた無機質なラブレターの山を、机の
ひきだしから取りだして焼こうとした。
 すると、机の奥から、銀紙で作った指輪が現れた。
 陽子には見慣れない指輪だった。
 二十歳になる前に、銀の指輪を貰えば、幸福になる……という言い伝えを陽子は知って
いた。しかし、誰からも、貰った覚えはないのだ。
 その夜、陽子は夢を見た。
 美青年が、陽子に銀紙で指輪を作り、手渡しながら……
「満月の夜、みつかべ村で待っている。そして、君と私は銀の指輪で結ばれる」
 耳元で確かにそう呟いたのだ。
 翌日、目覚めた陽子は、机の上にあった銀紙の指輪が、本物の銀の指輪に変っているの
に気付き首をかしげた。
 更に、郵便受けには、陽子への招待状が届いていた。
 「みつかべ蜂蜜祭」の招待状と、みつかべ村行きの切符が入っていた。
 陽子は、学校の友人で、スケバンの早川杏子に「みつかべ蜂蜜祭」の招待状を見せた。

 意外にも、杏子にも同じ招待状が届いていた。
「どういうこと?」
「さあ……この夏、私も陽子も別にやることもないし、面白そうだからひやかしに言って
みるか……」
 すると、劣等生の原田健一が、しゃしゃり出て来た。
ボディガードの御用はな~い?」
 恵一は、陽子の幼ななじみで、密かに陽子に恋心を持っていたが、陽子の方は全く眼中
になかった。
 健一は、陽子の失恋を知って、今度こそは自分の番だと思い、チャンスを狙っていたの
だ。
ボディガードにはならないかもしれないけれど、荷物運びにはなるかもね……」
 杏子の言葉に、陽子もしぶしぶ頷いて、女の子二人と男の子一人の三人は、「みつかべ
」行きの列車に乗った。
 どれほどの時間、汽車に乗っただろう。
 気が付くと、三人は「みつかべ」駅のホームに立っていた。
 駅から出ると、そこは、レンゲの花畑が広がり、古風な人力車が三人を待っていた。
「御招待したのは、女性だけの筈ですが……」
気味の悪い車夫は、健一を駅前に残して、二人を「みつかべ村」一番の旧家「みつかべ家
」に運んだ。
 そこには、陽子の他に、何十人もの女の子が、全国から招待されていた。
 その誰もが、銀の指輪を持っていた。
「みつかべ家」の長男善は、陽子が夢に見た美青年と同じ顔をしていた。
「みつかべ家」の召使いは、少女達に「みつかべ家」の言い伝えを教えた。
 銀の指輪を持つ少女の一人が、善の嫁になる権利があり、広大な「みつかべ家」の土地
は、全て、その少女の物になる。
「勝手に決められても困るわ……」
 顔を見合わせる陽子と杏子だが、少女達の中には、ふって湧いたこのシンデレラストー
リーに夢中になる娘もいた。
 その夜……。
 村では、蜂蜜の祭りが開かれた。
 蜂蜜の祭りは、この土地の守り神、蜜陀にささげられる祭りだった。
 三百年に一度、この土地に蜜陀が現われ、夜の中に幸福をふりまくというのだ。
 陽子は、善の絢しげな魅力に、あやうくくちびるを奪われかけるが、後を追って来た健
一にムードを壊され、キスはできなかった。
 深夜……。
 みつかべ屋敷に泊まった少女達を、無気味な影が、次々と恐った。
 それは、善の姿をしていて、女の子のくちびるを吸った。
 すると、女の子達はたちまちミイラの様に、生気を吸いとられてしまうのだ。
 無気味な影の存在を知った少女達は、協力して影と戦い始める。
 凄絶な戦いの末、台所にあった油と炎で、影の全身を焼いた少女達は、美しい善の顔の
 下から、醜悪な、蜂の頭部が現れるのを見て悲鳴をあげた。
 しかも、その怪物は、全く死ぬ気配もなく、少女達を襲い続けた。
 台所は火の海と化し、屋敷は炎上する。
 少女達は、炎と怪物に追われ、屋敷の奥へ奥へと逃げ込んで行った。
 その少女達の中には、陽子を守りたい一心で、女装してまぎれ込んだ健一もいた。
 陽子と健一の頑張りで、必死に抵抗していた少女達も 、遂には、屋敷の奥底にある井
戸に追い詰められ、次々に井戸の中に落下して行く。
 そこは、不思議な世界だった。
 広大なレンゲ畑が、どこまでも広がっていた。
 屋敷の召使いが、どこの宗教とも知れぬ神官の姿で現れ、少女達に告げた。
「この世界から抜け出すには、この世界の涯、蜜陀の神殿の蜜陀像から、銀の指輪を取っ
て来なければならぬ……さあ、行くがよい……蜜陀の戦士達よ……」
 いつの間にか、少女達は、鎧を見につけた蜜陀の戦士になっていた。
 ただ一人、健一だけが変身できず、現代の服装のまま、取り残されていた。
「とにかく、蜜陀の神殿とやらに行くっきゃないよ」
 杏子の言葉に少女達も頷き、一同は、蜜陀の神殿に向かった。
 心細気な陽子に健一は何の根拠もなく胸を張った。
「陽子は、僕が、きっと守ってやるからね」
 神殿に向かううち、少女達を、様々な危険が襲い、一人又一人と、少女の姿は消えてい
く。
 危険の多くは、羽根を付けた兵士の姿をした昆虫軍団の襲撃だった。
 気が弱く、闘争心のない陽子をいつも助けてくれたのは、口先だけは達者な健一ではな
く、スケバンの杏子だった。
 陽子は、そんな杏子に、あこがれにも似た熱いものを感じた。
「杏子、どうしてこうまで、私を守ってくれるの?」
「なんとなく、あんたは、他人のような気がしないのさ」
 健一は、そんな二人を見て、ぼやくだけだった。
「ちぇ、男のはいりこめない世界か……」
 やがて、蜜陀の神殿のある蜜陀の町に辿りついた時、少女達の数は、僅か数人になって
いた。
 だが、そこまで辿り着いた少女達だけに、それなりに、美しいだけでなくたくましい少
女達だった。
 少女達は、蜜陀の町の兵隊の乗るエアーバイクを奪うと、神殿内に突っ込んでいく。
 神殿内には、あの美青年、善にそっくりの男達が、少女達を待ちうけ少女達は次々に精
を吸われて倒されていく。
 とうとう、陽子と杏子の二人だけになった時、陽子は善の剣で、太股を傷つけられてし
まう。
 陽子は叫んだ。
「杏子、私にかまわず、早く蜜陀の指輪を……」
「そうはいかないわ!」
 倒れている陽子をかばった杏子は、善の剣で、重症を追う。
 「よくも杏子を!……」
 陽子の中に、底知れぬ怒りと力が湧きあがった。
                       プロット(その2完結編につづく)