首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「明日の記憶」は今日の記憶を大切に……

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月曜日。僕が監修している舞台ミュージカルの稽古を、見に行く予定だったが、まだ振り付けが、完全にでき上がっていないとの事なので、キャンセルして、渋谷をぶらついた。
 上映時間が、ちょうど適当だったので、同じビルで上映している二本の映画を見た。
明日の記憶」と「寝ずの番」である。
 両方とも、佳作だと思うが、「寝ずの番」は止めどなく出てくる猥談と春歌の数々についていけず笑えなかった。
 決して下品だとは思わないし、退屈もしなかったが、この種の笑いを、楽しめる粋な育ち方をしていないので……この面白さが分からないのは粋じゃない……と言われても、「ごめんなさい。笑えないんです」と答えるしかない。
 構成も、お通夜話を三つつなげたオムニバスを見ているようで、その三つのエピソードの笑いの質
が同じなので、全体が平板な感じを受けた。
 登場人物たちは、それぞれ好演していると思うのだが、僕自身が、笑えないのだから、どうしようもない。
 時間潰しにはなったと言う感じだ。
明日の記憶」は、働き盛りの男に襲いかかる若年性アルツハイマーを扱った映画だが、これには参った。
 救いがない映画だが、最近、物忘れが多くなった僕としては他人事とは思えない。
 実は、今、若年性アルツハイマーを素材にした企画をやっていて、この病気を扱った映画は、ほとんど見る事にしている。
 この病気をテーマにするのは、流行になった観があるが、「明日の記憶」の製作姿勢は、ただのお涙ちょうだいではなく、真剣な感じだ。
 僕は、精神病、依存症関係には、知人友人に医者や患者が多く、日本の脚本家としてはこの種の病気に詳しい方だと言う自負があるが、若年性アルツハイマーの患者や医者に知り合いがいない。
 この映画を見て、もっと詳しく調べる必要があるな……と痛感した。
 映画の前半に、主人公がアルツハイマーかどうかを病院で検査するくだりがあるが、実は、僕も同じ検査を受けた事がある。
 結果は、映画の主人公と、なんと、たいして変わらなかったのである。
 脳のスキャンをしてもらって、アルツハイマーではないと言う結果が僕には出たが、いまだにその恐怖はある。
 主人公とその妻の苦しみ悲しみは、明日の僕かも知れない。
 こうなると、映画の評価などしていられない。
 主人公とその妻に共感して、泣けてくる。
 佳作だと思うが、現代の状況では、救いようのない難病を、テーマにするのは、ずるいような気がする。
 しかし、中高年の人たちには、目をそらす事のできない映画ではある。
 人間、一生の中でやろうとする事があるなら、早めにやっておこうと言う気にさせる。
 それをやり遂げる前に、アルツハイマーで忘れちゃったら、もう、どうしようもないのだから……
 アルツハイマーは、まれにだが、二十代でも発生する病気だそうである。
明日の記憶」というより今日の記憶から大事にしよう。
 そんな気持ちにさせられた映画だった。
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PS.……ところで、僕に寄せられた質問風のコメントには、その日のコメントの場所で、答える事にしますので、よろしくお願いします。