首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「不思議の国のアリスのマッチ売り」 上演

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自分の関わっている作品の、感想を言うのは難しい。
 今日が初日で、二日だけの上演で、日曜の席は完売されたというから、今日の時点で、誉めようとけなそうと、客の入りには関係なさそうなのが救いである。
不思議の国のアリスのマッチ売り」という奇妙な名前の子供向きミュージカルの話である。
 といっても、子供だましではなく、かなり、設定からブラックな大人を意識したミュージカルでもある。
 客観的に観ても、日本製のミュージカルの水準はクリアしていると思う。
 久保田育子さんの作曲がいいし、演出の宇治川まさなり氏もがんばっている。
 だが、出演者の技量で、歌や演技がゆがんでいる事も確かだ。
 そこを直せば、再演も可能だろう。
 この劇団の数あるミュージカルの中では、二十年ぶりのまともなミュージカルだと思う。
 ちなみに二十年前の作品とは、僕が書いた「ピノキオの冒険」である。
 作曲は、森山良子さんの歌う「サトウキビ畑」で有名な寺島尚彦さんだった。
 ここ何年も思うのだが、この劇団の欠点は、劇団のトップが、いつもこの劇団の演目の主役をやるのが、ゆがみの最大の原因を生み出し続けてきた事だ。
「不思議な国のアリスのマッチ売り」の主役は、明らかにアリスでありマッチ売りの少女である。
 二人の主役は、もっとのびのび演技していい。
 それが何となく萎縮しているように見える。
 その理由のひとつには、本来脇役の筈の老女の魔女を、主役にしなければならない劇団事情にある。
 それによって、脚本まで無理が生じ、ゆがんでしまった所もある。
 「曲や踊りはいいんだけど……なんか変……」
 と……このミュージカルを観た僕の十歳の娘にまで、指摘されるストーリー上のゆがみである。
 そのゆがみを取り除く為には、劇団のリーダーの考え方を変えてもらうしかない。
 それが、可能になったら、この劇団から、もっと素晴らしい子供向けのオリジナルミュージカルが生まれるだろう。
 そんな淡い期待を持たせる「不思議の国のアリスのマッチ売り」だった。
 少し手直して再演される機会に恵まれれば、観て絶対損のないミュージカルである。
 しかし、このミュージカルの関係者であり、多少の脚本部分に手を入れ一曲作詞までした僕が、こんな感想を書くのは、おかしいと思われるかも知れないが、作品をよりよくしたいがための意見である。
 これでいいのだ。