首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

(ポセイドン」

映画「ポセイドン」を観た。
 昔、かなり出来のよかった災害映画「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクである。
 想像を絶する高波に襲われ、ひっくりがえった豪華客船「ポセイドン」から、脱出する話である。
 登場人物の中のいったい誰が死に、誰が生き残るか分からないというサスペンスあふれる、かなり面白い映画だった。
 生き残ろうとして、ひっくり返った船内をさ迷う登場人物達はパターンだが、それなりに、よく描かれていて、厚みがある。
 数あるパニック映画の中でも、見本になるようなよい出来だったと思う。
 本来なら死ぬはずのない、人の良い登場人物が死に、クライマックスには、ドラマの主人公に相当する人物まで、犠牲になるあたりは、本来のハリウッド娯楽映画には、あり得ない展開で、新鮮な驚きを感じたものだった。
 なお続編の「ポセイドン・アドベンチャー2」も作られたが、前作のヒット便乗品で、ちっとも面白くなかった。
 いずれにしろ一度はやりたい「ポセイドン」と言う事で、そのパロディを、「ポケモン」のテレビ版で、エピソードに加えたこともある。
 で、今回のハリウッド版リメイクだが、冒頭のタイトルバックで海上を進む豪華客船「ポセイドン」の威容を、前から後ろまで、もの凄い長回しで撮っているシーンには、「お……これは……!」とひざを乗り出したものの、よかったのはそこまでだった。
 お話が始まると、がたんと、つまらなくなる。
 リメイクとはいえ登場人物たちは、昔の「ポセイドン・アドベンチャー」とは、変えている。
 その登場人物たちが、前作に比べて、魅力がなさすぎるのである。
 だから、誰が死のうと生きようと、どうでもよくなってしまう。
 これなら、全員が生き残る「海猿2」のほうが、誰も死なないだけ、後味がよい。
 ドラマ上、感情移入できない、どうでもいい人が死ぬのは、案外、見ていて気持ちのいいものではない。
 これだけ水攻め火攻めで苦しんでいるのだから、みんな助けてやればいいのにと、製作者にいいたくなってしまう。
「ポセイドン」は「ポセイドン・アドベンチャー」のアドベンチャーが、無くなった分、薄味になってしまった。
 視覚的にも、船がひっくり返った為、上下が逆になる……つまり、天井が床になり、床が天井になるという面白さが、前作ほど効果的に使われていない。
 結果的に、何の為にリメイクしたのか分からない作品になってしまった。
 見どころは最初の五分か十分ぐらいのタイトルの部分だけというのは、あまりにもったいなく残念である。