首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

未制作○○○やつら2のプロット

これは、知っている人ならよくご存知のアニメ映画でありながら、ほとんど、できあがった作品とは違うプロット(あらすじ)です。
 この作品には、面白いいきさつがあります。
 この作品の一作目を作った方達が、別のプロットを作ったのですが、制作会社や原作の出版会社が、そのプロットを了解せず、困った制作会社が、僕に依頼して、どうにか企画は通りました。
 ところが、シナリオの前段階である箱書き(脚本のもとになるメモのようなもの)を書いている途中、監督はこのプロットでは、やりたくないから降りると言い出したのです。上映日は、決まっていますし、監督に降りられると作品が出来ません。
しかたなく、僕のほうが降りる事になりました。
かといって、監督達が用意した最初のプロットが、今更、通るわけもなく、僕の設定に似たような似ていないような絵コンテが、あっという間に監督の手で書かれ作品は出来上がりました。
 その作品は、監督の好みが全面に出た、それなりの作品で、僕の意図していたものとはまるで違いますし、いまさら、僕がとやかく言う気はありません。
 ギャラも、制作会社から、映画一本分の脚本に相当する額をいただきました。
……とはいえ、脚本は完成しておらず、まだ箱書き途中の原稿料なのに、完成した脚本分のギャラをいただいたわけです。
 枚数はわずかですし、おそらく一枚あたりに換算すると、今の僕でもとれない最高の額です。
しかし、映画化はされなかったし、設定が似ている所もあるし、映画化されたものとほとんど違う筋とはいえ、原作もあります。
 ですから、他に使いようもありません。
 パソコンの奥に放り込んで置くのも、かわいそうなので、ここに掲載します。
 まずは、プロット(あらすじ)……それから、箱書きを載せるつもりです。

   ○○○やつら その2  プロット
                       首藤剛志

 昔々“地球にまだ人類が誕生していない程昔、銀河の果てで、星と星がちょっとした衝撃事故を起こしました。
 その衝撃のエネルギーは、津波のように、銀河中に広がり、遂に、地球暦の20世紀後半なると、エネルギー津波はラムの故郷ラム星に波及。ラム星の軌道を変更してしまいました。ラム星は高速に近い速度で動き始め、その進路の先に地球がありました。
 このままでは、地球とラム星は衝突してしまいます。
 この衝突を救えるのは、ラム星の伝説によれば、ラム太陽系の惑星が直列した日に誕生した鬼娘を心から愛している男の放出した、愛のエネルギーと、その男から愛されていると確信した鬼娘の心に生じる愛のエネルギーが合体したラブパワーしかありませんでした。 その鬼娘の名はラム…そして愛してくれる男は、ラムの独断と偏見によればあたるの筈でした。
 かくしてこの宇宙スケケールの壮大な愛のドラマになる筈の話は、友引高校周辺のちまちました人間ドラマに凝縮されざるを得ない宿命を背負うことになったのです。
 文字通り「愛は地球を救う!」…そういうオーバーなテーマを俺んとこに持ち込まないでほしい!あたるの絶叫が聞こえるような気もしますが、起きてしまった事は仕方がありません…ともかくラム星と地球が衝突するまで、5日間しかない状況に、世界は追い込まれていたのです。
 ところが、当事者のあたるは、そんな宇宙の危機はつゆ知らず、「電話番号おせーて!住所聞かせて!」と、ラムの電撃をもろともせず、ガールハントにはげんでいます。
 ラム星と地球の危機は、ラムの耳に届いていましたが、浮気放題のあたると二年以上も暮らしていると、あたる以外眼中にないラム自身も、本当にあたるがラムを愛してくれているのか疑問を感じざるを得ないのです。
「地球が破滅するかもしれないっていうのに、うちのダーリンときたら…もううちら、だめかもしれないちゃ…」
 しょげかえるラムを、弁天達、女悪友達がなぐさめようと街のディスコにさそいます。 「男なんて、いいかげんなもんさ、他にいいのを探しなよ」
 そんな彼女たちに軽薄に声をかけてくる田舎のシティーボーイに、彼女たちの女の怒りが爆発!遂にディスコを粉々にする大乱闘に発展します。
そして、オーバーヒートしたラムはエネルギーを使い果たし、鬼娘の能力のない、普通の女の子になってしまいます。しかも、そのショックで、あたるおの過去をすっかり忘れた記憶喪失の状態になってしまいました。
 あたるとのしがらみを忘れたラムにとっては、あたるは、ただの女好きの軽薄な男に過ぎません。
そして面堂やめがね達にとって、ラムの心の中のあたるが消えた今、誰もが、ラムの愛を受けとめる資格があるのです。
 さらに、あたるから解きはなれたラムの心は、知力、財力、美しさ?の申し分のない面堂に傾いていきます。
 めがね達はおもしろくありません。あたるだって面白い筈がありません。鬼娘でなくなった、普通の女の子のラムは、だれが見たって魅力的な女性ですからね…。
 ラムから愛されて、悪い気のしない面堂ですが、やはりラムの愛にいごこちの悪い気分がします。妹の了子が、面堂の心を言い当てます。
 「お兄さんは、ラムさんを愛している訳ではない。できの悪いあたるを愛するラムさんを許せなかっただけなの。その気持ちをラムさんへの愛と思い込もうとしてるんだわ」
 「そうだ!そうかもしれない。あたるの手から放れたラムは本当のラムではない。僕は、
あたるとの過去を思い出したラムさんこそを愛すべきだ…それが本当のあたると僕のラムさんに対する愛の勝負になる!」
 どっちにしたって記憶を失って普通の女の子になったラムに地球とラム星を救うエネルギーはありません。
 誰でもいい、ラムの記憶を取り戻し、ラムを愛して、地球とラムを救ってくれ!
 宇宙の危機をもろともせず、ラムをめぐるアホらしいラブゲームを展開する一同に頭にきたテンちゃんは友引高校もろとも一同を、ラムの心の荒野に次元移動させます。
 ラムの心の荒野、そこは人っこ一人いない未来の荒れ果てた東京でした。
 いきなりの移動であわてた一同ですが、とりあえず、荒れ果てた東京で、サバイバルを開始します。やがて食料もつきはて、あたると面堂、めがね達は出口をもとめて東京の街にふみだします。
 悪戦苦闘の末、ラムの心の地獄の域にたどりついた一同は、ラムの凍りついた心を発見します。
 彼らが、ラムの心の地獄から抜けだす為には、ラムの心の果てにそびえる山の頂上にある心の炎で、凍りついた心をとかすよりありません。
 時間は地球とラム星が衝突する…すなわち、地球が破壊され、ラム自身も死んでしまう、タイムリミットは明日の夜明けまでしか残されていません。
 ラムの心をとかすことは、とりもなおさず、ラムの愛を得ることになります。
 そして、この心の荒野から抜け出すことにもなります。
 一同は、こころの炎を求めて走り出します。
 様々な障害に、一人又一人と倒れていき、心の山にたどりついたのは、あたると面堂ら数人でした。
 夜明けは近い、炎を燃やしたたいまつを持ってあたるは走ります。
 やがて、面堂も倒れ、走るのは、あたる一人に…あたるはひたすら走ります
 孤独なマラソンランナーのように…
 走り続けます、あたるは…
 あたるは間にあうか… 
 夜明けは、すぐそこです…
 走れ、あたる。    
              さて、どうなるか…….