首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

ミュージカル「白蛇伝」

 先日、知人から、ミュージカル「白蛇伝」……White Lover-……の入場券を頂いた。
 日本初の劇場用長編アニメーション「白蛇伝」を原作にした東映アニメーション渾身の舞台ミュージカルだそうである。
 舞台ミュージカルだから、勿論、アニメーションではなく、本物の人間が、歌い、踊り、演技をする。
 主演……安倍なつみ……知らないなあ……
     市川右近……聞かないなあ……
     彩輝なお……誰だそれ……
 と、言ったら、家族から馬鹿にされた。
 それぞれ、アイドル界、歌舞伎界、宝塚関係で、かなり名の知れた人だそうである。
 歳はとりたくない……と思い、二十二日の水曜日に、娘を連れてル・テアトル銀座という劇場に、見に行った。
 この劇場には、三回ほど行った事があるが、小田原から東京に引っ越しをして来てからは、僕自体は、用事を渋谷・新宿で済ましてしまい、そもそも銀座自体が、ひさしぶりの浦島太郎状態である。
 知らないうちに、世界の有名ブランド店が、ずらりと並んでここはどこの国の通りかとびっくりである。
 「白蛇伝」のアニメは、子供の頃に見た覚えがあるが、ミュージカル版は、こんな複雑な筋だったっけ?と、首をかしげるようなストーリーだった。
 おまけに、アイドル調と、歌舞伎風台詞と宝塚ムードがごっちゃになったような奇妙な舞台だ。
 ようするに、「愛は素晴らしい」というよくあるテーマなのだが、そのラストに行き着くまでに、いろいろあって、疲れてしまった。
 おまけに、座席が後のほうで、お目当ての主役クラスの役者の顔が良く判別できない。
 このミュージカルに限ったことではないのだが、日本のミュージカルは、歌詞が聞き取りづらい。
 どんな事を歌っているのかよく分からないのである。
 スタッフやキャストは、毎日の練習で聞き慣れ、歌い慣れているから、歌詞が分かっているが、初見の観客には、歌詞が、耳にすんなり入って来ない。
 練習の時は伴奏がおそらくピアノだけだろうが、本番はオーケストラや電子楽器が伴奏になるから、なおさら聞き取りにくい。
 僕もミュージカルの台本や作詞を作る立場になったことが何度もあるから、なるだけ分かりやすいメロディラインを要求し、聞き取りやすい歌詞を書くことを心がけているが、なかなか難しい。
 日本製のミュージカルの場合、歌詞が観客に聞き取れるだけでも、傑作のうちに入れてもいいかもしれない。
 日本語に翻訳した外国のミュージカルの場合は、歌詞に関しては、初見ではほとんど絶望的である。
 何度もそのミュージカルを見て筋を知っているか、そのミュージカルの日本訳の歌詩を聞きなれているかしないと歌詞をなかなか理解できないだろう。
白蛇伝」は和製ミュージカルの難しさを再確認できただけが取り柄のミュージカルだった。
 切符を下さった方には、こんなことしか書けなくて、申し訳ないというしかない。 
 なお、アニメのミュージカル化としては「テニスの王子さま」とか、「ギャラクシー・エンジェル」などの舞台ミュージカルも見たことがあるが、あれは、また別種のミュージカル……のようなもの……である。
 アイドル系の男の子や若い女の子が歌い踊り芝居するだけで、僕のようなおじさんも満足出来る? 特殊なものだと思っている。
 第一、伴奏に、「キャー」「キャー」という黄色い歓声や、アイドルの名前を連呼するおにいさんやおじさんの声がまじるだけでも、並のミュージカルと違うすごいものがある。
 プロデューサーの方の「目のつけ所が違うでしょ」と言う誇らしげな声が、聞こえるような気がする。
 案外、こういう方向から、和製ミュージカルの可能性が見えてくるのかも知れない。