首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

「ラッキーナンバー7」

脚本の世界では、時々どうしようもないシナリオと言うものが存在し、それが、あるシリーズの一話だった場合、そのシリーズ全体をぶち壊すことがあると聞いていたが、いままでそれほどひどい脚本は、素人が書いたものでも出会ったことはなかった。
 ところが、とうとう、僕も、そんな脚本と、ご対面してしまった。
 しかも、僕自身が関わっているシリーズだからたまらない。
 脚本家が、自分の書いた本に酔っぱらっているとしか思えない、シリーズ全体が見えていない脚本である。
 なんだかんだと無為に時間が経った末に……今ごろになって、好きなように書き換えてください、と、その脚本家が言って来た。
 ところがもう、直す時間も余裕もないのだ。
 僕としては、まるで、交通事故にあったような気分である。
 その脚本について、一ヶ月近く、いらいらと為す術も無く時間を費やしてしまった。
 そんな時だっただけに、脚本の出来がいいという評判の映画「ラッキーナンバー7」を、期待して見に行った。
 出来がいい脚本と言うより、脚本をひねくり回して、観客をあっと言わせる趣向の映画で、面白いことは面白かった。
 観客を翻弄するのが目的の脚本だから、内容を少しでも書くとネタばれになってしまうので止めておくが、少し強引な設定があり、よく考えると妙な所のある映画である。
 本筋にはあまり関係ないのだが、「007シリーズ」とヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」を見ていないと良く分からない部分もあるのも、ちょっとつらい。
 R-15指定だけあって、かなり残酷で、陰惨な話なのもマイナス要因になると思う。
 字幕の日本語訳もちょっと不親切で、ただでさえややこしい展開を、なおさらややこしくしている気がする。
 同じ、観客ひっかけ映画なら、アカデミー賞を取ったジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」という傑作があり、それに比べると脚本も演出も数段落ちると思う。
 もっとも、「スティング」と比べる方が無理なのかも知れないが……ともかく、面白いことは面白いので、この際、「スティング」を見ていない方は、レンタルでもして、「ラッキーナンバー7」と見比べて見るのも一興かも知れない。
「ラッキーナンバー7」は、人が言うほど脚本がいいとは思えないが、観客をひっかけ、楽しませようという努力は分かる脚本である。
 だが、こちらのシリーズの問題脚本は……それを思うと、悲痛なため息が漏れる……。
 えーだば、えーだば、なんとかなるだば……では、済みそうにない。