首藤剛志のふらふらファイル箱

人並みのつもりにしては、ふらふらしています。

力道山とピーナッツ

DVDで、スポーツをテーマにした映画を二本見た。
 「力道山」と「ピーナッツ」である。同じスポーツを素材にあつかった映画とはいえ、とんでもない組み合わせだが、いつか見ようとレンタル屋で借りて、レンタル期限が来たので、まとめて見たのだ。
 「力道山」は、本物のプロレスラーの方も、小さな頃、街頭テレビで見た記憶がある。
 空手チョップで、外国人レスラーを、倒す姿に、人々は沸き返り、確かに、時代のヒーローだった。
 だが、誰もが日本人のヒーローだと思っていた「力道山」が、実は、日本人ではなかったという事実を素にして、この映画は作られている。
 真面目に作ろうとしている気持ちが分かるが、いまひとつ、「力道山」の人間が見えてこない。
 彼の成功は、韓国人である事への差別や、コンプレックスが、ばねになったのか、それとも、単なる権力欲なのか、あいまいになっている。
 思うに、この韓国映画、日本人への配慮が、行き届きすぎているのだ。
 日本人を良く描きすぎているのだ。
 それが、何だか、僕には座りの悪いものに見える。
 日本人が英雄視していた「力道山」は、本当は韓国人なんだぞ……ざまあみろ……ぐらいの高飛車な態度で作られたほうが、すっきりするのだが、この映画のスタッフは日韓友好に気を使いすぎている。
 かえってそれが不気味である。
 「力道山」を囲む日本人の俳優達も、なかなかの好演である。
 それだけに、なぜ、今、「力道山」の映画が出てくるかが分からない。
 映画の中の「力道山」は絶えず、何かに対していらいらしている。
 それが何なのか、はっきり見えてこないのが、逆に僕を、いらいらさせる。
 僕が、プロレスに、あまり興味がないのが理由かも知れないが、真面目に作られている事は分かるが、何が言いたいのか良く分からない映画だった。
 
「ピーナッツ」は、草野球をテーマにした人情コメディである。
 ウッチャン、ナンチャンの内村光良氏が、監督、脚本、主演の作品だが、ワンマン映画にしては、内村氏が、さほどでしゃばらず、素直に作ってある。        
 素人が集まって野球のチームを作るという他愛のないよくあるストリーだが、野球をテーマにしているだけで、僕の頬は緩んでくる。
 この手の野球コメディにはお決まりの、女性プレーヤーも出てくる。
 最初から最後まで、くすくす笑って見ていられる。
 ただ、この映画、コメディだけにふざけて作られているかと思えば、結構、真面目に作られている。
 作っている本人達は真面目なのに、見ている側は、下手だなあと笑ってしまう……まるで、映画自体が、草野球のような作品である。
 
 「力道山」と「ピーナッツ」この二本のスポーツを扱った映画は、どちらも、真面目な態度で作られている。
 しかし、日韓の関係まで意識したであろう大真面目な映画より、作りたい映画を、一生懸命、手作りした、ちまっこい真面目さのある映画の方が、僕は楽しめた。
 もっとも、この二つの作品を並べて比べるのは、不謹慎といわれれば、返す言葉はない。
 たまたま、なんとなく、レンタル屋で、借りてしまったから、比べちゃっただけである。